【国難打破】“急増”する中国の軍事力にどう対応するのか 「緊急事態条項」すらない日本の憲法

日本や米国、欧州などの民主主義諸国と、中国やロシアの独裁・権威主義諸国との対立が深まっている。日米欧は中露に対し、GDP(国内総生産)で2・5倍、軍事費で1・4倍と依然優位にあるが、その差は急速に縮まっている。
冷戦後のGDP伸び率で、中国は24倍だったが、米国は3倍、欧州は2倍、日本は1・25倍に止まった。軍事費でも、中国は過去30年で約51倍だが、日米欧は約2倍と低調である。
ドナルド・トランプ米政権は軍事費増額を重視しており、2020年度国防権限法で承認された国防予算の上限枠は、7500億ドル(約81兆6750億円)に達している。しかし、米国の累積財政赤字は約21兆ドル(約2286兆円)で、国防費増額は限界にきている。
もしも、日本や欧州が相応の国防努力を怠れば、両陣営の年間軍事費は約5年で逆転するおそれがある。
日本が直面している脅威はNATO(北大西洋条約機構)の比ではない。中国やロシア、北朝鮮だけでなく、韓国との関係も悪化している。日本がNATO同様、防衛費をGDPの2%以上に引き上げなければ、北東アジアの軍事バランスは維持できない。
人員も不足している。
日本は、現役自衛官が24万7000人、予備役と海上保安庁の7万人を合わせて、計31万7000人程度しか動員可能数はないが、中国は基幹民兵を含めると約870万人を動員できる。守るべき国土や領海、経済価値、人口規模からみても、周辺国に比べて過少といえる。
現在でも自衛隊は深刻な募集難に直面しているが、今後は少子高齢化がさらに進み、18歳から32歳の募集対象人口は、今後10年間で3分の2に急減する。
国家として国防への協力を企業や組織、個人に義務付けた憲法の規定も法令もない。新型コロナウイルスの感染拡大で注目されたが、わが国の憲法には、世界のどの憲法にもある「緊急事態条項」の規定すらない。
このように不備な体制と不利な情勢の中で、日本は世界最大の軍事力と対峙(たいじ)する地域である北東アジアで存立していかなければならない。
それでも、「憲法改正は必要ない」という人は、直面するこの危機から、どのようにして国家と国民を守れるというのだろうか。(軍事研究家、元陸将補・矢野義昭)