「とうふちくわ」論争で総選挙も これは豆腐かちくわか

鳥取県東部で江戸時代から食卓に上がる特産品「とうふちくわ」。最近では「植物性」と「動物性」の両方のタンパク質を同時に摂取できる「ダブルたんぱく」の食品として注目されている。形はまぎれもないちくわだが、かじると豆腐の風味がする。これは豆腐なのか、ちくわなのか。観光客らの間でしばしば論争が起こる。
総務省の位置づけは…
とうふちくわは、名前のとおり豆腐とちくわを混ぜ合わせた練り物。見た目は白く穴の開いた棒で、口に入れると軟らかく、大豆の風味が広がる。
鳥取市内ではスーパーの食品売り場で普通に売られている。手でちぎってそのまま食べたり、ショウガ醤油(じょうゆ)を付けたりする。おかずや酒のつまみのほか、地域の祭りや冠婚葬祭などさまざまな場で出される。
通常のちくわは魚のすり身を原料にしているが、とうふちくわはすり身に木綿豆腐を混ぜて作られる。江戸時代に鳥取藩主が質素倹約のため、貴重だった魚の代わりに豆腐を食べるよう奨励した。
「県外の人はちくわだと思って食べて、その食感や味に驚く」と話すのは、とうふちくわをPRする市民団体「鳥取とうふちくわ総研」(鳥取市)の植田英樹所長(50)だ。
原料の割合は、豆腐7に対して魚のすり身3とするのが主流。山村の多い鳥取では江戸時代、田んぼのあぜに大豆が栽培され、豆腐作りが盛んだったという。
このとうふちくわ、総務省の家計調査では豆腐に含まれていない。
にもかかわらず、豆腐の割合が多いことから、ちくわにも認定されていない。はんぺんなどが入る「他の魚肉練製品」として扱われているのだ。
ちなみに、同家計調査(平成28~30年平均)によると、鳥取市の1世帯あたりのちくわの購入金額は、とうふちくわが含まれていないにもかかわらず、全国1位。とうふちくわが分類されている「他の魚肉練製品」も同2位だ。市民はどれだけちくわが好きなのか。なお、豆腐も5位にランクインしている。
長寿自治体を下支え?
「豆腐」か「ちくわ」かで見方が分かれる中、鳥取とうふちくわ総研は市民を対象に「とうふちくわが『豆腐』か『ちくわ』か」を決める“総選挙”を実施したことがある。
豆腐派の主張はこうだ。「豆腐とすり身の割合、成分からいえば豆腐。魅力もそこにある」
一方のちくわ派。「形はちくわだけど実は豆腐だという方がインパクトがあるし知的。合コンのネタに使える」とした。
結果はちくわが117票で、豆腐(33票)に圧勝した。植田所長は「見た目がどう見てもちくわ。キューブ状なら豆腐に票が集まった」と分析する。
こうした中、「観光客から豆腐かちくわかよく聞かれるが、とうふちくわは唯一無二の存在」と話すのは、1865(慶応元)年創業のとうふちくわの製造メーカー「ちむら」(鳥取市)の千村大輔専務。
普段からとうふちくわを食べる同社の30~70代の女性従業員14人の筋肉量を測定したところ、全員が全国平均を上回り、特に60~70代は、3~7キロも多いという調査結果が出た。
とうふちくわは「植物性」と「動物性」の作用が異なるタンパク質をとれる珍しい「ダブルたんぱく」の食品。調査を監修した佐々木一・神奈川工科大非常勤講師(応用栄養学)は「植物性タンパク質は筋肉分解を抑え、動物性タンパク質は筋肉を増やす働きがある。日常の食事で両方一緒にとることが、筋肉量の減少を抑制する働きになっているのではないか」と分析している。
鳥取市は厚生労働省が発表する長寿ランキングで毎年上位に入る。千村専務は「とうふちくわは、地元では何となく健康にいいと思われてきたが、『ダブルたんぱく』は知らない人が多かった。今後は海外にもっと売り出したい」と話している。