「娘は戻らない」と母親 相模原殺傷事件、植松被告に16日判決

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年7月、入所者ら19人を殺害し、26人を負傷させたとして殺人罪などに問われた元同園職員、植松聖(さとし)被告(30)に対し、横浜地裁(青沼潔裁判長)の裁判員裁判は16日、判決を言い渡す。26歳の娘を奪われた母親は被害者参加制度を利用して出廷し、娘の無念を代弁した。検察側は死刑を求刑したものの、母親は「どんな刑でも娘は戻らない」と語る。
2月12日。意見陳述に臨んだ母親は娘の遺骨が入ったペンダントを胸につけて証言台に立った。四つ葉のクローバーをかたどったペンダントを身につけていると、娘と一緒にいる感じがする。静まりかえった法廷で「どうしても娘の思いを伝えたい」と語り始め、こみ上げる嘆きを抑えながら娘への思いを語った。
娘は重い自閉症だった。大好きなドライブを一緒に楽しんだこと、動物園で象を見て驚いたこと……。言葉で表せない考えを仕草で伝えてくれた。
障害者への差別感情から事件を起こしたとされる被告は法廷で「意思疎通できない人は社会の役に立たない」と言った。母親は娘の姿を伝えて反論した。「笑ったり、怒ったり、泣いたり。いろんな表情で自分を表していた」。そして「もっと生きてほしかった」と訴えた。
事件から3年以上過ぎても被告の名を口にすることさえ、ためらわれるという。事件を思い出すと息苦しくなるためだ。1月8日の初公判の日が近づくにつれ、体調がすぐれず言葉が出なくなることもあった。それでも意見を述べることを決めた。「許すことはできないが、この思いが被告に伝われば。そして反省してくれたら」と考え、涙をこらえてA4用紙7枚の意見を書き上げた。
被告は遺族らが傍聴する法廷でも差別感情を隠さなかった。母親は判決を前に「事件の核心に触れていない。心の中がわからない」と語る。厳しい刑を望むものの、たとえ死刑になっても娘が戻って来ることはない。「報われない思いは続く」と静かに語った。
母親は今も障害者を蔑視する空気が社会にあると感じる。「望んで障害者になったわけではない。社会が障害者を受け入れ、障害者とともに生きていける世の中になってほしい」と願っている。【木下翔太郎】