傍聴席で改めて知る「障害を持つ我が子が生きる意味」 相模原殺傷公判

相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で2016年、利用者ら19人を殺害し、26人を負傷させたとして殺人罪などに問われた元同園職員の植松聖(さとし)被告(30)に対し、横浜地裁(青沼潔裁判長)の裁判員裁判は16日、判決を言い渡す。社会を震撼(しんかん)させた事件の裁判は被害者の遺族や家族だけでなく、障害のある家族がいる人や福祉関係者らも傍聴を続けた。【中村紬葵】
土屋義生さん(40)=横浜市=は、生後まもなく髄膜炎を患って体が不自由な長男と並んで公判を複数回傍聴した。障害を持つ子をケアする父として事件は無関係ではないと感じ、「言葉がなくても幸せだ」と被告に示したかった。
長男の荘真さん(6)はほとんど寝たきりで話すことはできず、呼吸器を24時間つないでいる。昨年から主夫として、荘真さんの世話をしている。仕事を辞めた当初は、荘真さんを見る目に、どこか社会への負い目や何もできない子という決めつけがあった。荘真さんが自発呼吸をし始めたことをきっかけに、「あの子の世界で一生懸命生きている。社会の物差しで見なくてもいいと気づいた」という。
5回目の公判でようやく傍聴でき、バギーに乗った荘真さんと一緒に被告を見つめた。差別的な主張は知っていたが、同じ空間にいると、傍聴席にいる自分や荘真さんが被告の「標的」になるとじかに感じ、「怖くなった」。
公判で語られた被告の考えや事件までの経緯は土屋さんにとって「物足りなくて残念だった」。被告に自身がしたことをもっときちんと振り返ってほしかったという。
傍聴は、土屋さんが自分自身に目を向ける機会にもなった。被告の主張は到底受け入れられないものだが、かつての「決めつけていた自分」の中に「被告の考えと重なる部分があった」と感じたからだ。障害者に対する差別や偏見が社会にあることは、自身の経験からも否定できない。土屋さんにいろいろな生き方、考え方があると気づかせてくれたのは荘真さんだった。「それが荘真が生きる意味」。そう改めて知ることになった裁判だった。
「やまゆり園」元職員 本心から謝罪を「やまゆり園」
「津久井やまゆり園」に30年以上勤務し、事件を風化させないための活動をしている元同園職員の太田顕さん(76)は被告人質問を傍聴した。時期は重なっていないが同じ園で働いた被告がなぜ事件を起こしたのか。「彼の口から、凶行に及んだ理由を聞きたい」と思っていた。
傍聴するまでは、報道を通じて知った被告の主張から「モンスターのようにどんどん彼の姿が大きくなっていた」という。事件を起こしたことは「福祉について深く考える中で実行したのではないか」と考えるようにまでなっていた。
法廷で初めて見た被告は小柄だった。被害者の代理人弁護士らからの問いに対する回答は内容だけでなく、表現まで似たことの繰り返しで表面的にしか聞こえなかった。「今ある状態でより幸せになる環境を作ることこそが福祉の責務」と考える太田さんにとって、「福祉のことをまるでわかっていない」という内容だった。「被告のイメージが崩れた」という。
公判中で被告が語った理由には納得していない。謝罪のような言葉を述べた一方で自らの考えは正しいと主張を変えなかった被告に対し、「大変な過ちを犯したと悔恨し、本心からの謝罪をしてほしい」と語る。