「まるで新型コロナの予言」 米パニック映画「コンテイジョン」 専門家は「冷静に対応を」

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、人類が未曾有のパンデミックに襲われる米パニック映画「コンテイジョン」(2011年)が「まるで予言だ」とインターネット上などで注目を集めている。専門家らは「パニック映画は極端な例で現実には起きないが、警鐘と受け止めるべきだ」と注意を促す一方、日本人が比較的冷静に対応していることを評価している。(池田証志)
最悪のシナリオ
コンテイジョンとは、英語で「感染」のこと。監督はアカデミー賞受賞歴のあるスティーブン・ソダーバーグで、マット・デイモンやグウィネス・パルトローら名優が競演し、評判も上々だった。
「MEV-1」と名づけられたウイルスは感染率が高く、2、3日で発症。せきや発熱に始まり、数日で脳が侵され死に至る。人類の12人に1人が感染し、うち4人に1人が死亡するかもしれないという設定だ。
「恐怖はウイルスより早く感染する」という映画のキャッチコピー通り、人々は恐怖にとりつかれ、スーパーの食料品や日用品を買い占める。州境が閉鎖され、学校は休校。看護師は感染を恐れ、職場を放棄する。医療崩壊だ。抑制的な情報公開に不信感を抱いた米国民は、インターネット上のデマを信じ、暴動が起きる。やがて警察による治安維持も不可能になり…。
描かれたのは、まさに最悪のシナリオだ。
映画のようにはならない
映画では、初期感染者の接点は中国、ウイルスの起源はコウモリとみられると設定している。現在進行形の新型コロナウイルスの到来を予期していたかのようなストーリーだ。
しかし、「致死率が高過ぎると、パンデミックを起こせない。映画のような規模にはならないので、冷静に対応してほしい」と話すのは、感染症に詳しい新潟大の斎藤玲子教授(公衆衛生学)。致死率が高過ぎると、ウイルスが寄生した人間を滅ぼしてしまい、他の人間に乗り移ることができなくなってしまうというのが疫学の定説だという。
映画では、感染症の専門家へのインタビューに基づいて作られたというだけあって、接触感染源となるドアノブや乗り物の手すりのアップのシーンや、「手で顔を触らないで」というセリフがあり、実用的な感染拡大防止策も描いている。
パニック回避を
「パニックはウイルスより深刻だ。暴動の引き金になる」
映画の中で、米疾病予防管理センター(CDC)の医師がこうつぶやく場面がある。
ブロガーを演じたジュード・ロウは映画公開時、産経新聞の取材に「この作品で一番怖いのは病気じゃない。人間だよ」と答えている。
斎藤教授も「災害級の感染症は恐怖心でデマに惑わされやすくなる」と警鐘を鳴らす。「パニックは国民の政府への不信感が引き超すことが多い。政府のリスク・コミュニケーションが大事だ」と唱える。
リスク・コミュニケーションとは、「ここまでは政府でサポートする」というサポート情報と「ここは危険」というリスク情報の両方を公表することをいい、これにより国民は政府を信頼し落ち着いて行動するようになるという。斎藤教授は「他国に比べ日本は比較的冷静だ」とみている。
安全・安心研究センター代表で東京女子大の広瀬弘忠名誉教授(災害・リスク心理学)は「映画のようにはならないので『パニック神話』と呼ぶ。これまでの研究では、実際にはなだらかに状況が推移し、対処する時間ができる。映画にはパニックにならないようにという警鐘の意味はある」と解説する。同時に「あまり人々を脅し過ぎると、現実化してしまう『脅しの自己実現性』もあるので気を付けてほしい」と注意を促した。