「新型コロナ・経済・検察人事」今の日本で大事な点は3つだ/倉山満

―[言論ストロングスタイル]―

◆「生物兵器説」を垂れ流した言論人の責任を問う段階に入ったと考えるべきだ

もはや、この世の終わりか?

コロナウィルスでパニックになっているところに、リーマンショック以来の株価暴落。そして、国会では小西洋之(コニタン)がマトモなことを言い出した。これこそ本物の天変地異だ。明日は沖縄に雪が降るか? それとも地球に隕石がぶつかるか? とにもかくにも、人心は大混乱だ。

そんなある日、我が国の副総理閣下であらせられる麻生太郎財務大臣が、新型コロナウィルスに関して大胆に言い切った。

「これは一言で言うと、ウィルス性の風邪」「対策は風邪と同じ」「体を温かくして、うがい手洗いをしっかりしましょう」

それ、日本で一番パニックになっている、安倍晋三総理大臣閣下に言ってあげればよいのではないか。あの「アホウ太郎」が冷静沈着に科学的な知見に基づいた発言をしている! いよいよUFOでも飛来するか、末法の世か。

ただ、この麻生大臣の断言には、少なからずの人々が安堵したのではないか。特に、根強く残る「武漢ウィルス=生物兵器」説には、未知の病原体であるだけに多くの人々が怯えていたであろうし。保守を標榜する月刊誌とタブロイド紙を見よ。まるで『ムー』と見まごうようなタイトルが並んでいる。中身を読むと、さらに目の毒だ。

さすがに安倍首相も、陽性反応が出ながら回復した人の数を明言した。仮にコロナが生物兵器だったとしても、自然治癒するようでは使い物にならない。もはや「生物兵器説」を垂れ流した言論人の責任を問う段階に入ったと考えるべきだ。

では、一応はプロと思われる人たちは、なぜヨタ話を信じ、拡散してしまったのか。検証すれば、プロの言論人の皆さんが、プロの技術が無いどころか、大学生の卒業論文レベルで身につけておかねばならない技量を持ち合わせていないという現実に行きつく。

まさか連中も、この騒動を「ビジネスチャンス!」と考えるような下衆ではあるまいが、それにしても扇動は目に余った。「パンデミックは確実」「世界の70%が感染する」「日本人は最大57万人が死ぬ」等々。いずれも、Yahoo!ニュースの見出しであり、地上波でも同様の内容が報じられた。「専門家」の見解を紹介する間接話法が、伝言ゲームのようにメディアで伝わり、恐怖を拡散した。

WHO(世界保健機関)はパンデミック(世界的に広がる感染症)を宣言した。だが、今回のコロナに罹ったとしても死ぬ人間はほとんどいない。確かに、新型コロナウィルスは未知の病原体であり治療薬はないが、そんなものはノロウィルスも同じだ。寝て治すしかない。ホラー映画の影響で「パンデミック」という言葉の影響力は大きいが、不必要に恐れては余計に恐怖が広がるだけだ。

こう考えると「感染率最大70%」と聞かされても、治るのであれば、これまた不必要に恐れなくてよい。ちなみに元ネタを探ると、「専門家」氏は「40~70%の感染率を警戒すべき」と一つのシナリオを述べているに過ぎない。

◆現在の日本において、大事なのは、新型コロナウィルスと経済と、検察人事の三つの繋がった問題だ

悪質なのは「日本人は最大57万人死ぬ」だ。この数字も驚きだが、「最低でも12万7千人が死ぬ」と言い切っている論者もいる。この数字を下回った場合、どう責任を取るのか? それこそ、最低でも断筆だ。

恐怖に打ち勝たなければならない時に恐怖を撒き散らした罪は重い。

地上波は朝から晩までコロナの報道ばかりだし、ネットに至っては与太記事のオンパレードだ。

では、どこに真実を求めるのか? 自分が目の肥えた読者になるしかない。それには、いい加減な言論をした人間を覚えておき、許さないことだ。そして、世の中の大事な問題から目をそらさないことだ。

現在の日本において大事な点は三つ。新型コロナウィルスと経済と検察人事だ。この三つはつながっている一つの問題であり、体系化して総合的に理解しなければ、どれもわからない。

第一に、新型コロナウィルスだ。総理大臣が「ビュッフェ」と「スポクラ」を名指しで自粛を求めたことで、この二つに関する業界は壊滅的な打撃を受けている。なぜ他でもなくこの二つだけを名指ししたのか? 現在、日本で最もパニックを起こしているのが安倍晋三さんなのだから、仕方がない。突如として全国の学校に休校を要請し、同調圧力により塾や予備校までが休業している。おかげで子供たちはゲームセンターにたむろしている。何も考えていなかった思い付きの政策の末路だ。いっそのこと、老人が集まる株主総会の方を自粛した方がよさそうなものだが、そういう考えはないらしい。

第二が、経済だ。「たかが風邪」による行きすぎた自粛により、景気は「ナイアガラ」のような下落だ。そもそも緩やかな景気回復しかできていなかったところへ、消費増税10%。そこにトドメのように過剰な自粛と買い占め騒動。

アルバイトや非正規労働者、フリーランスの人間は明日の家賃も払えないかもしれない。政府は予備費2700億円を当てると宣言したが、1億人に配ったら1人当たり2700円だ。舐めているのか? さらに「必要な人には融資をする」などと言い出す。この状況で人に借金をさせるとは、正気を疑う。

世界各国は必死に対策を講じている。特に香港は18歳以上の住民に一律14万円相当の金額を配るとか。香港は金本位制で自由にお金を発行できないのに、民を路頭に迷わせないために必死だ。こういう発想は我が国の為政者には無いらしい。

第三に、本欄でさんざん伝えている検察人事だ。森まさこ法相の答弁は成立しておらず、あげくには「検察官は東日本大震災の時に真っ先に逃げた」などと言い出した。何を考えてこんなことを言い出したのかわからないが、政権の末期症状を象徴する人物だ。

もはや枝野幸男さんも安倍内閣を庇えない段階に入った。

こんな絶望的な状況だからこそ、自分が総理大臣だったらどうするかを考えてみよう。

私なら国民に対し訴える。こんなものは、たかが風邪だ! うろたえるな! 日本人すべてが死に絶えるわけではない。恐れるべきは、冷静な心を失うことだ!

信無くば立たず。国も人も、心が負けた時に滅びる。

【倉山 満】
憲政史研究家 ’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』など著書多数。最新著書に『13歳からの「くにまもり」』

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