菅義偉官房長官が「安倍政権はまだ1年数カ月ある」と淡々と語れば、岸田文雄政調会長も「まだ記事を読んでいない」と言葉少な。「ポスト安倍」候補の2人が記者団に答えたのは、岸田派で名誉会長を務める古賀誠元幹事長(79)のインタビュー記事への感想だ。
古賀氏は10日発売の 月刊誌「文藝春秋」 で「菅さんと岸田会長がタッグを組めば、強い」と語り、「岸田政権」で、菅氏を幹事長や官房長官に据える案を披露。
「菅氏が普段、岸田氏を『何をやりたいのか分からない』と馬鹿にしているのは周知の事実。だが古賀氏はそんな2人をあえてくっつけようとしている」(政治部記者)。菅、岸田両氏は古賀氏の政治的思惑を感じ取り、踏み込んだ発言を避けた。
8年前に引退した古賀氏だが、その政治力はなお強い。今も古賀氏の政治団体には年間7000万円の収入があり、繰越金は6億円を超える。この資金力に加え、古賀氏は政界指折りの「人たらし」だ。宴席があれば豪華な土産を用意し、熨斗に「心ばかり 古賀誠」と記す。2018年の党総裁選を控えた安倍晋三首相から、ひそかに会食に誘われた際は、首相に、スーツ仕立て券30万円分を手土産として渡した。
ここぞという時のカネの使い方を熟知する古賀氏。対照的なのは皮肉にも、派を譲った岸田氏だ。新型コロナウイルスが問題化した直後、徹夜で働く外務省職員に差し入れたのは栄養ドリンクとカップ麺。高級寿司を差し入れた二階俊博幹事長とのギャップもあって、「古賀氏なら、どーんと差し入れたはずなのに」と困惑気味の不満が漏れた。
望月元環境相の葬儀でも鮮明になった古賀氏と岸田氏の差
古賀氏はスーツにタツノオトシゴのブローチをつける。岸田派の事務総長で昨年末に亡くなった望月義夫元環境相が生前、辰年生まれの古賀氏の誕生日にプレゼントしたものだ。その望月氏の葬儀でも、新旧領袖の違いが鮮明になった。「望月先生」と呼び、淡々と用意した紙を読み上げた岸田氏に対し、古賀氏は永田町での綽名の「もっちゃん」と何度も呼びかけ、会場はむせび泣いた。地元での綽名の「よっちゃん」とも時に呼びかけ、地元関係者への配慮まで見せつけた。
政治部デスクは言う。
「岸田氏は首相になれてもお人形。古賀氏からの親離れを勧め、岸田政権を牛耳ろうと目論む安倍&麻生に、麻生太郎財務相と犬猿の仲の古賀氏がそうはさせまいと、同じく麻生氏と関係の悪い菅氏を抱き込んだ岸田政権像を示して見せたのでしょう」
古賀氏は昨秋『憲法九条は世界遺産』なる自著を上梓したほどの改憲反対派。人形遣いの座をめぐる戦いは早くも過熱しつつある。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年3月26日号)