「外出自粛、基準が曖昧」「子どももストレス」「いつまでしのげるか…」宣言秒読み、戸惑う市民

感染拡大に終息の気配がない新型コロナウイルスを巡り、政府の緊急事態宣言は大阪府と兵庫県も対象とする方針が固まった。これまで通り強制力はないが、今後は法的根拠に基づいて自粛ムードが高まる。感染防止対策の切り札ともされる宣言は生活にどんな影響を及ぼすのか。市民からは不安や戸惑いの声が相次いだ。
大阪・ミナミの繁華街。大阪市内の女性会社員は6日、高校へ今春入学する長女の学用品を買いに訪れた。長女の高校は休校延長が決まっているが、「緊急事態宣言で学校再開の時期がさらに変更になるかもしれない。自分の仕事にどんな影響が出るのか予想もできない」と不安げ。外出自粛要請について「基準が曖昧で、どう動いたら良いか分からず混乱する。自粛の内容をもっと具体的に示すべきだ」と訴えた。
高校生と中学生の子ども計3人を持つ大阪市の女性会社員(49)は「都市封鎖になると誤解され、食料品などの買い占めが起きないだろうか。学校は休校中で、子どももストレスを抱えている。宣言が出ても行政には教育面で手厚い支援をしてほしい」と語った。
書店を営む男性(85)は、落ち込む客足に追い打ちをかけるような宣言の発令方針に「売り上げの落ち込みは今後も続くだろう」と嘆く。食料品店を経営する男性(62)も「宣言が出たからといって、これ以上悪くなるとは思えない。それだけ今が大変」と悲壮感を漂わせ、「コロナの影響をいつまでしのげるか、全く見通せない」と話した。
大阪府内へ仕事に通う人たちの心境も複雑だ。奈良県生駒市から東大阪市に通勤する建設業の男性社長(45)は「建設現場に人が集まらなければ、仕事にならない。宣言が出ても生活のためには仕事内容を変えることはできない。政府はテレワークや時差出勤を呼びかけるだけでなく、それが難しい業種はどうすれば良いか指針を示してほしい」と求めた。
大阪と同じく、緊急事態宣言の対象地域になる見込みの兵庫県。神戸市中央区で中華料理店を経営する50代の男性は「緊急事態宣言前に閉めると廃業したと思われるので、早く宣言を出してほしかった。これで堂々と店を休める」と安堵(あんど)した。2月半ばから団体客のキャンセルが続出。3、4月は歓送迎会シーズンにもかかわらず、売り上げは例年の6分の1以下に。「今のままでは、店は7月までもつかどうか。社員の給料の半分でも政府が補償してくれれば助かるのに」とこぼした。
通学する兵庫県西宮市の大学が20日に再開予定という奈良市の大学生、大西寿続佳(すずか)さん(19)は「感染のリスクが高まっているのかと思うと、とても不安。緊急事態なら授業も再開を延期してほしい」と訴えた。一方、小学2年と5歳の女児、2歳男児の3人を育てる保健師の女性(41)=尼崎市=は「行動範囲が広い大人の活動制限につながるはずの宣言をなぜもっと早く出さないのかと思っていた。自粛中の子育てはしんどいが、命には代えられない」と宣言の発令を評価した。【澤俊太郎、峰本浩二、林みづき、加藤佑輔、韓光勲】