都市部中心に感染者急増し医療現場は危機的…政府、収束へ「国民一丸」強調

安倍首相が6日、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づく緊急事態宣言の発令を決めたのは、東京都など7都府県の感染拡大が深刻化しているためだ。首相は宣言で感染に歯止めをかけ、営業自粛などによる減収については緊急経済対策で救済する方針だ。
「東京や大阪など、都市部を中心に感染者が急増している。医療現場では既に、危機的な状況となっている」
首相は6日、首相官邸で宣言発令の方針を示した際、記者団にこう危機感を示した。
首相は宣言発令を判断するにあたり、東京都の感染動向を特に注視していた。都内では6日、感染者数の累計が1116人に達し、感染経路が不明な事例も多くなっている。宣言を発令するには、〈1〉国民の生命と健康に重大な被害を与える恐れがある〈2〉全国的かつ急速な

蔓延
( まんえん ) で国民生活と経済に甚大な影響を及ぼす恐れがある――という特措法が定める2要件を満たさなければならない。
政府は宣言発令に合わせ、基本的対処方針を改定する。新たな対処方針の原案では、2要件のうち、〈1〉については「肺炎の発生頻度が季節性インフルエンザにかかった場合に比して、相当程度高い」と説明。〈2〉については「感染経路が特定できない症例が多数に上り、かつ急速な増加が確認されており、医療提供体制も

逼迫
( ひっぱく ) してきている」と指摘した。
宣言により、7都府県知事は特措法に基づき、不要不急の外出自粛要請や施設使用の制限、停止の要請・指示ができるようになる。いずれも強制力はないものの、政府は宣言を機に感染予防の国民意識が高まることを期待している。ただ、施設使用の制限などに伴う休業について、特措法に補償規定はない。政府は、7日に取りまとめる緊急経済対策で中小企業や減収世帯を支援し、打撃を最小限にとどめたい考えだ。
一方、宣言によって生活用品の買い占めなどの混乱が起きる恐れもある。宣言をきっかけに感染者が地方に帰省すれば、更なる感染拡大を招きかねない。このため政府は、基本的対処方針の原案に、「緊急事態を宣言しても、ロックダウン(都市封鎖)のような社会機能を相当程度停止させるような施策は実施しない」と明記。そのうえで、「対策を国民一丸となって実施することができれば、感染を収束の方向に向かわせることも可能だ」と強調している。