「復興事前準備」進まず 南海トラフ津波想定 自治体8割「準備なし」

被災後のまちづくりに向けてあらかじめ体制や手順などを定めておく「復興事前準備」について、南海トラフ巨大地震で深刻な津波被害が予想される14都県139市町村のうち8割が昨年末時点で策定していないことが毎日新聞のまとめで判明した。阪神大震災や東日本大震災の教訓を踏まえ、国土交通省は全自治体に策定を促しているが、ノウハウや人手の不足により、自治体の作業が後回しになっている状況が浮かび上がった。
大災害の後は、自治体は避難所運営や仮設住宅建設などの復旧作業、住民は生活再建に追われ、復興に向けてどのようなまちづくりを進めていくかを十分に検討することが難しい。阪神・東日本の被災地では、自治体の進めた再開発事業や高台移転などが住民の意向と合わないケースが相次いだ。
これを受け、国交省は2018年7月、「復興まちづくりのための事前準備ガイドライン」を公表。自治体に対してあらかじめ復興計画づくりの体制や手順を決め、被害想定に基づいて、まちづくりの目標や実施方針を検討しておくよう勧めている。
毎日新聞は復興事前準備の有無について、今後30年以内に7割以上の確率で発生が予想される南海トラフ巨大地震の「津波避難対策特別強化地域」に指定されている139市町村を対象に調査。19年11~12月に全市町村から回答を得たうえで取材を加えて分析した。
その結果、110市町村は準備がなく、策定着手もしていなかった。理由は「人手不足」「防災より優先度が低い」などだった。13市町は策定中だった。
一方、準備がある16市町村のうち、被害想定を基に住宅・商業地を再建する場所など、まちづくりの内容にまで踏み込んだ計画を作ったのは静岡県富士市と和歌山県美浜町だけだった。富士市は住民への意向調査などを実施し、既存の地域コミュニティーを維持する形で復興住宅を整備することなどを決めている。
震災復興に詳しい塩崎賢明・神戸大名誉教授(都市計画)は「どう被災するかは事前に分からないので復興計画自体は災害後に作らざるを得ない。ただ、平時に街の現状を冷静に直視し、住民も含めて話し合うことは重要だ。事前に高台へ移転するなど『防災』にもつながる」と話している。【春増翔太】
復興事前準備を策定していない(19年末現在)と回答した市町村
【千葉県】 館山市▽南房総市▽鋸南町 【東京都】 利島村▽新島村▽神津島村▽三宅村▽御蔵島村▽青ケ島村 【神奈川県】 平塚市▽鎌倉市▽小田原市▽三浦市▽葉山町▽大磯町▽二宮町▽真鶴町 【静岡県】 浜松市▽磐田市▽掛川市▽袋井市▽下田市▽湖西市▽御前崎市▽牧之原市▽東伊豆町▽河津町▽南伊豆町▽松崎町▽西伊豆町 【愛知県】 田原市▽南知多町 【三重県】 津市▽四日市市▽伊勢市▽松阪市▽鈴鹿市▽鳥羽市▽熊野市▽志摩市▽川越町▽明和町▽大紀町▽紀北町▽御浜町▽紀宝町 【兵庫県】 洲本市▽南あわじ市 【和歌山県】 和歌山市▽有田市▽御坊市▽田辺市▽新宮市▽広川町▽日高町▽白浜町▽すさみ町▽那智勝浦町▽太地町▽古座川町▽串本町 【徳島県】 徳島市▽鳴門市▽小松島市▽阿南市▽牟岐町▽海陽町▽松茂町 【愛媛県】 宇和島市▽八幡浜市▽西予市▽伊方町 【高知県】 高知市▽室戸市▽安芸市▽南国市▽土佐市▽須崎市▽宿毛市▽土佐清水市▽四万十市▽東洋町▽奈半利町▽田野町▽安田町▽中土佐町▽四万十町▽大月町▽黒潮町 【大分県】 大分市▽佐伯市▽臼杵市▽津久見市 【宮崎県】 宮崎市▽延岡市▽日向市▽串間市▽高鍋町▽新富町▽川南町▽都農町▽門川町 【鹿児島県】 西之表市▽志布志市▽大崎町▽東串良町▽南大隅町▽肝付町▽中種子町▽南種子町