「こっちは、生きるか死ぬかなんだよ!」
そんな怒声が飛んだのは3月末の東京・文京シビックセンター地下2階。新型コロナウイルス対策用“緊急融資”の窓口でのことだ。区の職員らしき男性がなだめるが、融資を求める男性の怒りは収まらない。実は今、各地でこのような光景が目撃されている。
◆面談だけで1か月待ち!
「なんで、4号認定と緊急融資の面談を一緒にできないんだよ? また1か月以上待たせるっていうのかよ!?」
4月3日、東京・港区役所の産業振興課のカウンターでは、同じく緊急融資の申し込みに訪れた事業者が、区の職員にこう詰め寄っていた。「4号認定」は国の定めるセーフティネット保証制度における認定の一つ。災害等の突発的事由により経営に支障をきたし、売上高が20%以上減少するなどの条件を満たすと4号と認められ、借入債務の100%を信用保証協会が保証してくれる。
一方で、事業者の言う「緊急融資」は港区が独自に用意した融資あっせんの枠組み。区が利子のすべてを負担することで、事業者は所定の金融機関から無利子で借り入れを行うことができる。いずれも区の窓口で中小企業診断士などによる面談を受けた後、認定ないし融資あっせんの可否が決まるのだが、申し込みが殺到して担当窓口は完全にパンク状態。港区職員によると、緊急融資の面談までに1か月半。
4号認定になると、なんと2か月待ちだというのだ。おまけに、面談をパスしても希望どおりの融資が受けられるとは限らない。申し込みに来ていた焼肉屋「晩翠」の金尚建代表が話す。
「2月以降、売り上げが40%も落ち込んだため、3月に入ってすぐに4号認定を申し込んで、27日に銀行に8000万円の融資をお願いしました。けど、1週間たっても審査が終わらず、満額借りられるのかもわからない。仮に1000万円しか出なかったら終わり。だから区の緊急融資制度も申し込んでおこうと思って今日来たんです」
同じく、融資の申し込みに来ていた飲食店の女性経営者が話す。
「日本政策金融公庫の特別貸付の申し込みに行ったら面談は1か月待ち。港区の融資あっせん制度を頼ろうにも、こっちは1か月半待ちです。住まいは世田谷区なので同区の個人向け少額融資も申し込んだのですが、それも20万円の融資を受けられるのが4月末と言われました。さらに、従業員の休業補償のために、雇用調整助成金の申し込みに行ったら20ページ以上の申請書に記入するよう言われて……もう発狂しそうです」
このように、緊急融資の窓口が修羅場と化しているのは、都内でも特に飲食店が多い港区と渋谷区。自治体によって混雑具合はまちまちだが、殺気立った事業者たちで溢れている点は変わらない。ハローワークも同様だ。文京区で飲食店を経営する事業者が話す。
「雇用調整助成金を申請しようと思ったら、窓口担当者が制度の概要さえ把握しておらず、申し込みの面談まで3時間待ち。助成金の追加特例措置が3月28日に公表されるなど、幅広い事業者を支援できるよう制度をバージョンアップした結果、窓口がそれに対応できなくなっているんです。何時間も小さな待合室で待たされるうえに、助成金が出るのは2か月先という遅さだから『ここでコロナにかかったらどうするんだ!?』とキレる人が多数いました」
◆6月まで資金繰りの目途が立たない事業者も
このように窓口がパンクする状況は当面続くとみられる。東京商工リサーチの友田信男情報本部長が話す。
「リーマン・ショックは金融機関を始めとした大手企業から伝播していきましたが、コロナ・ショックは中小零細企業の多い川下の小売り・サービスをまず直撃しました。この分野は非常に事業者が多いため、融資の申込件数が膨大な数にのぼっているのです。面談まで1か月待ちで、融資がおりるまではさらに2週間近くを要するとすれば、6月まで資金繰りの目途が立たない事業者も出てくるでしょう。すると、仕入れ代金の支払いが滞るなどして、卸業者などにも波及。今後、日に日に緊急融資を希望する事業者が増えていくのは間違いありません」
マスク、トイレットペーパーなどに続いて、不足するのはカネか。事業者の苦悩は続く……。
◆3月末から融資希望者、倒産企業も急増……
日本政策金融公庫によると、3月の決算期末にかけて新型コロナ対応融資の申込件数が急増。相談件数は優に10万件を超えたという。一方、商工リサーチによると、新型コロナ関連の倒産および法的整理手続きに入った企業数も3月期末にかけて急増し、計40件弱に。資金繰りの悪化により、さらに倒産件数が増加していくのは必至だ。
<取材・文/週刊SPA!編集部 写真/産経新聞社>
※週刊SPA!4月7日発売号より