台風19号から半年 仮設からようやく自宅へ 「やっとほっとできる」

東日本に大きな被害をもたらした台風19号の上陸から12日で半年。岩手県山田町田の浜地区では、東日本大震災後に津波対策で整備された堤防が山からの水をせき止める壁になり、多くの住宅が浸水した。仮設住宅暮らしを続けてきた福田和子さん(72)は4月に入ってようやく、修理を終えた自宅への引っ越しを始めた。「やっとほっとできる」。長かった避難生活の終わりを目前にして安堵(あんど)の笑みを浮かべた。【日向米華】
4月上旬、福田さんは自宅に買ったばかりの家電を並べ、仮設住宅から運んだ荷物を整理した。「ここでまた生活ができると思うとうれしい」と声を弾ませた。
田の浜では、大雨で流れ出た土砂が排水管につまり、堤防周辺の約6万5000平方メートルが浸水した。長女(48)と2人で暮らしていた福田さんの自宅も、床上1メートル以上が水につかった。
その後は高台の仮設住宅に移った。部屋は4畳半2間に台所と風呂が付いていたが、窮屈だった。東日本大震災以来2回目となる被災生活だが、震災の時は津波の被害を逃れた自宅の2階で暮らすことができた。住み慣れた自宅とは違い、今回は周囲に何もない高台で、買い物や人付き合いに不便さを感じた。備え付けられた家具や家電には「山田町 持ち出し禁止」の文字。長女は「住める場所があることには感謝している。でもそこまで管理されているのかと思うと……」と疲れた表情を見せた。
この半年間、和子さんは毎朝6時半ごろに仮設を出て、自宅に通った。厳しい寒さの中、ストーブに火を付けて大工を迎え、夕方まで泥出しや掃除を続けた。「気付けば半年たっていた」と振り返る。そんな中でも、仮設住宅から見える満天の星や朝焼けを見ると気持ちが和らいだ。「自然の猛威にやられたけど、自然に心を救われた」と語る。
修理を終えた自宅の窓からは、崩れたままの堤防が見える。町の水害検証委員会は3月、検証結果を報告し、津波と土砂災害の両方に対する防災強化を提言した。だが、直接説明を受けたのは自治会幹部らにとどまり、福田さんは文書だけを受け取った。
震災と水害が重なり田の浜の人たちは自然の脅威に敏感になっている。「崩れた堤防をどうするか。排水機能をどのように強化するのか。穏やかな生活を取り戻すために、分かりやすい説明を直接聞きたい」と感じている。