【消えた核科学者 警察庁拉致関係リストの真実】#5
プルトニウム製造係長 竹村達也さん
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竹村達也の名前は、警察庁のホームページに掲載されていた。「拉致の可能性を排除できない事案に係る方々」として、46人の対象者がいる大阪府警のページに載っていた。竹村は大阪出身。失踪時に実家の家族が届け出たことから、大阪府警の管轄になっているのだ。
氏名 竹村達也(たけむら たつや)
年齢 36歳(行方不明当時)
住所 茨城県那珂郡
職業 公務員
身体特徴等 身長165センチメートル 体重55キログラム
失踪当時の状況は次のように書かれている。
「昭和47(1972)年3月1日、茨城県下の勤務先を退職した後、行方不明となっています」
警察のリストに竹村の名前があることを知らせるため、私は2017年5月、竹村の部下だった男に再会した。東京都内の焼き鳥屋で男は言った。
「ほら、やっぱりね。あの時、刑事さんは竹村さんのことを『北に持っていかれたな』って言ったんだから。今でもはっきり覚えているよ」
男は興奮しているのか声が大きかった。隣の客と肩があたるような狭い店内で、私はハラハラした。
「それにしても」と、私は男に尋ねた。
「なぜ、住所が『茨城県那珂郡』までで、『東海村』と詳しい住所を書いてないんでしょう? なぜ職業を『公務員』とかしか書かないんでしょう?」
すると男は、今度は声を落として言った。
「当時はアメリカとソ連だけではなく、各国が核兵器の開発をしていた時期だ。そんな時に、政府の管理下にある動燃で、プルトニウムの製造係長をやってた人が北朝鮮に拉致されたかもしれないとしたら、大変なことになる。動燃を連想させる『東海村』とは書けないし、ましてや職業欄に『核科学者』なんて書けるわけないだろう」
確かに男の言う通りだ。安倍政権が拉致問題を解決しようと躍起になっていても、核科学者が拉致された可能性があることが明るみに出れば、世間はスキャンダルに騒然とする。2つの事情の狭間で、中途半端な表現になったのだろう。
警察庁のホームページに情報をアップした際、国家公安委員長の古屋圭司は国家公安委員会でこう言っている。
「いろいろな反響もあると思われるので、このような一連の取り組みのなかで今回発表に至っているということを、改めてご認識いただきたいと思う」
私は警察には頼らず、独自で取材を進めることにした。 =敬称略
(ワセダクロニクル編集長 渡辺周)