「誕生の瞬間 分かち合えないのはつらい」 里帰り出産、夫の立ち会い「NO」相次ぐ

新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、緊急事態宣言の発令前に里帰り出産を決めた妊婦が、夫の出産立ち会いを病院から断られるケースが相次いでいる。院内感染を防ぐためとはいえ、待ちに待った我が子の誕生を夫婦で共有できない状況に心を痛める。
「感染防止が最優先と理解している。だが、初産のつらさを一人で乗り切ることも、誕生の瞬間を夫と分かち合えないことも、どちらもつらい」
出産を前に、福岡県の実家で過ごす女性(27)は無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通じて毎日新聞の取材に答えた。東京都内で夫(26)と暮らし、里帰り出産のために3月初旬に帰省した。当初は陣痛が始まったら夫に連絡し、出産に立ち会ってもらう予定だった。
しかし、7都府県に緊急事態宣言が発令された7日、日本産科婦人科学会(日産婦)など2団体は妊婦に里帰り出産の自粛を求める文書を公表した。立ち会い分娩(ぶんべん)や面会の制限についても病院の方針に従うよう要請しており、実際にこの女性も出産予定の病院から「入院中は夫と面会できない」と説明された。「現在、夫は福岡の実家に来て待機してくれているが、出産後は退院するまで会えそうにない」。女性は不安な気持ちを吐露した。
同じく里帰り出産のため、妻(30)が2月末から山口県の実家に帰省中という都内在住の男性(36)は4月初旬、「大都市圏から来院される場合、出産の立ち会いだけでなく、産院の建物内にも入れない」と病院から告げられた。「生まれてくる娘は第1子。窓ガラス越しに顔を確認するくらいはできると思っていたが、院内にすら入れないとは」とがくぜんとした。
妻の出産後、なるべく早く山口へ行くつもりだが、都内は外出自粛要請が出ている。緊急事態宣言の期限は5月6日だが「それまでに事態が収束する保証はない。感染拡大が続く東京から来たことを周囲に知られたら、批判の目にさらされるかもしれない」と男性の不安は尽きない。「マスクを常に着用し、手洗いや消毒、検温を徹底しながら、一日も早く娘に会える日を待ちたい」と話した。
感染症に詳しい新潟大医学部の斎藤玲子教授(公衆衛生学)は「感染拡大を防ぐ大事な時期にあり、移動の自粛は避けて通れず、我慢の時期と言える。ただし、行政など自粛を呼び掛ける側も、過度な不安やいわれのない差別や偏見を生まぬよう配慮して説明を尽くし、協力を呼び掛ける努力が重要だ」と話した。【林田奈々、近松仁太郎】