新型コロナウイルスの感染者を受け入れている病院で働く医療従事者の子どもが、保育所への登園を断られるケースが相次いでいる。医療機関は「正しい理解で対応して」と呼びかけ、厚生労働省も是正を求める通知を出した。一方、自粛を求めた保育所も「子どもの命を守るため」と苦しい胸の内を明かす。
男性医師1人の感染が確認された愛知県豊明市の藤田医科大病院では今月10日、女性看護師の孫が、報道を見た保育所から登園の自粛を求められた。数日後、保育所から「登園前に(感染した男性医師の)濃厚接触者でない旨の証明書を提出してください。子どもたちの命を守るため、慎重な対応をさせていただきます」とのメールが届いたという。看護師は上司に相談し、証明書の交付を受けた。
同病院ではこの保育所に子どもを登園させている職員が多く、仕事を休んだり、別の保育所への転園を余儀なくされたりした人もいた。病院の幹部は「患者の診療にも影響が出る。差別を受けるのは最前線のスタッフにとって悲しいこと」と憤った。
ただ、この保育所の園長は「少しであっても感染の可能性がある。子どもの命を第一に考えた結果だった」と訴えた。仮に子どもや職員に感染者が出れば休園しなければならず、他の保護者に迷惑がかかってしまう。証明書も自治体に相談した上で提出を求めた。「証明書は、他の保護者の安心につながる。できる限りの感染対策は取っているが、保育所はどうしても3密(密閉、密集、密接)になりやすい」
新型コロナウイルスの感染が広がる中、差別や偏見を受けたという医療従事者の訴えが相次いでいる。愛知県病院協会によると、県内のある女性看護師は、子どもの送迎を他の人に代えるよう保育所に求められたという。また「直接、感染者に接触していなくても、人を介して感染しているかもしれない」と、登園自粛を求められた医療従事者もいた。近隣住民から「ウイルスをばらまかないよう職員全員外出禁止にして」という苦情を受けた病院もあった。
こうした事態を受け、厚労省は「医療従事者は感染防御を十分にした上で、対策や治療に当たっている。偏見や差別が生じないよう十分配慮すること」との通知文を全国の自治体に出した。厚労省保育課は「医療従事者だからといって一律に受け入れを拒否するのは問題。過剰な対応は差別につながりかねない。感染予防については、保健所にも相談した上で対応してほしい」と呼びかけている。【川瀬慎一朗】