容疑者、数日前に解雇 「就業時に恨み」 福岡うなぎ店立てこもり

21日午前8時半ごろ、福岡市南区大橋1のウナギ料理店「うなぎの黒田屋」で包丁を持った元従業員の男が、男性店主(36)の3歳と6歳の娘を人質にして立てこもった。建物に入った捜査員がドア越しに説得を続け、約6時間後の午後2時半ごろ、福岡県警は逮捕監禁と住居侵入の容疑で男を現行犯逮捕した。解放された姉妹のうち6歳の姉が右手の指に軽いけがをしていたが、いずれも命に別条はなかった。
逮捕されたのは同区三宅2、無職、渡辺祐樹容疑者(35)。「間違いありません」と容疑を認めている。捜査関係者によると、渡辺容疑者は数日前に店を解雇されており、動機について「就業時の恨みがあった」という趣旨の供述をしている。店主との間で金の貸し借りを巡るトラブルもあったとみられる。
現場の建物は4階建てで1、2階が店舗、3、4階が店主ら家族の住居になっている。県警によると、渡辺容疑者は開店準備中の店に押し入った後、店主ともみ合いになった。店主と妻は店の外に出たが、渡辺容疑者は店内の包丁2本を持って姉妹と3階部分で立てこもり、店主と直接話すことを要求。捜査員が監視する中、店主と電話できた後は説得に応じ、包丁を店内に置いて出てきたところ身柄を確保された。捜査員は窓越しに姉妹の安否を確認していたが、姉の指のけがが事件に関係したものかは調べを進める。
一方、現場付近の防犯カメラには事件発生時刻と同じ時間帯に店から出てきた男性を男が刃物のような物を持って追い回す姿が映っていた。男性を残して男は店に戻りその後、パトカーが駆けつけた。2人は渡辺容疑者と店主とみられる。
現場は西鉄天神大牟田線大橋駅前の商業施設とマンションが建ち並ぶ地域。事件発生後はパトカーや救急車が多数出動して騒然となり、近隣住民が不安そうに見守った。【浅野孝仁、田崎春菜、中里顕】
「お母さーん」幼い姉妹は体にすがって泣き叫んだ
「お母さーん」。約6時間後に救出された幼い姉妹は、母親の体にすがって泣き叫んだ。「助かって本当によかった」。一部始終を見守っていた近くの60代女性は胸をなで下ろした。
家族経営で近所から「名店」と親しまれるウナギ料理店の周囲は朝から騒然となった。建物の入り口付近はブルーシートで囲まれ、防刃チョッキを着用した複数の警察官らが慌ただしく行き来した。立てこもっている3階から容疑者や姉妹が飛び降りる可能性も警戒したのか、地面には分厚いマットも用意され、県警は説得が行き詰まった場合の強行突入も検討していた。
午後2時半過ぎ、現場に待機していた救急車がサイレンを鳴らして発車し、容疑者逮捕の知らせが伝わると、姉妹の身を案じて集まった住民らがほっとした表情を浮かべた。
近くの女性(48)によると、姉妹はよく店内で塗り絵をして遊び、6歳の姉は店員や客とおしゃべりを楽しむこともあったという。姉妹が救出されたことを知った女性は「(容疑者は)顔見知りのはずで、けがはさせないと思っていた」。一方、30代の主婦は「新型コロナウイルスで社会に不安が広がっている。事件が続かないでほしい」と不安そうに語った。【大坪菜々美、中里顕、一宮俊介】
最近の主な立てこもり事件
2015年5月 宮城県大崎市のJA支店で、男がカウンターにガソリンのような液体をまいて立てこもった。職員と客は避難し、男は警察の説得中にライターで火を付け、逮捕された
8月 愛知県岡崎市のコンビニエンスストアで、男が店員2人を人質に立てこもり、監禁容疑などで逮捕された
2016年2月 千葉県佐倉市の教会で、男が女性を人質に立てこもり、約8時間後に逮捕された
5月 松山市の集合住宅で、包丁を持った男が元交際相手の女性を人質に立てこもり、約17時間後に逮捕された
2017年1月 福岡市博多区のビジネスホテル7階で、男が女性従業員を人質に立てこもった。男は客室の窓から飛び降り、死亡した
8月 名古屋市中村区のマンションで、イタリア国籍の男が7階の部屋に拳銃を持って立てこもり、約3時間後逮捕された
11月 北九州市八幡西区のマンションで、住人の男が猟銃を発砲後に自室に立てこもった。その後、猟銃で自殺した
2018年6月 東京都渋谷区の居酒屋で、無銭飲食をした男が刃物を持って店内に立てこもり、約2時間後に逮捕された
2020年1月 島根県出雲市の運送会社で、男が女性事務員を人質に約18時間にわたって立てこもり、逮捕された