新型コロナウイルス感染拡大による休校が続く中、農家が提供した野菜などを使って飲食店が弁当を作り、給食がなくなった子供に無料配布する取り組みが、4月中ごろから東京都江戸川区で行われている。中心となって企画したのは、給食用に地元特産のコマツナを生産する小原英行さん(42)。3月に出荷先を失ったコマツナを多くの人に購入してもらい、「次は誰かを助ける番」と仲間の農家や子育て支援団体などに呼びかけて始めた。
同区内の飲食店5店舗で2回目の配布となった18日、荒天にもかかわらず「パティスリーカフェひばり」には子供の母親や中学生らが次々と「こども弁当」を受け取りに訪れた。配られたのはコマツナをふんだんに使った「鶏の三色丼」。前回の評判が良く30食から50食に増やした。事前に整理券を配り、行列ができないよう配慮。利用者は共働きやシングルマザーの家庭が多いという。前回も弁当を受け取った竹村利子(さとこ)さん(10)は「おいしくて助かります」と笑顔を見せた。同店の竹内絢子(あやこ)店長(40)は小中学校などの休校が始まった先月から、給食の代わりに100円と200円で子供向けの弁当を販売。小原さんの呼びかけにもすぐに応じた。3月からの売り上げは激減しているが、感染拡大が収束するまで、赤字でも子供たちの支援を続けるという。
コマツナは江戸時代に同区小松川周辺で品種改良を経て栽培され始めた。1年を通して生産でき栄養価も高いため、学校給食でも重宝されてきた。4代続くコマツナ農家の小原さんは、12年前から給食向けに出荷。今では95%を占め、安定供給に力を注いできた。
国の休校要請により計6トンを超える出荷が止まったが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使った通信販売により、3月は廃棄せずに済んだ。そして、東日本大震災後に売り上げの一部を寄付して被災者から喜ばれた経験から、今も東北のフードバンクに食材を贈り続けていることもあり、「次は困っている人を助けたい」という思いが湧き上がった。
同区で子育て支援をする一般社団法人「ハギュット協会」に声をかけ、子供たちへの弁当の無料配布を考え、友人の農家とコマツナの無償提供を決めた。外出自粛で打撃を受ける飲食店を少しでも支えるきっかけになればと、地元の店に調理の協力を呼びかけ、5店が応じた。米や卵、タマネギなどの他の食材は購入して準備。18日には用意した165食を配食した。26日の3回目の配布は、8店舗で実施する予定だ。
小原さんは、今は「こども弁当」と通販以外の出荷先がないが、給食の再開に備えコマツナの生産を維持し続けるしかない。しかし、「人に助けてもらったら、次は誰かを助ける。そういう行いを続ければ、感染拡大が収束した後の社会が良くなるはず」と話し、今後も地域と子供の支援を続けるつもりだ。【梅村直承】