新型コロナウイルスの感染が拡大する中、家庭ゴミを回収する清掃員が感染リスクに直面している。ゴミ袋の中には使用済みマスクやペットボトルが交じり、感染者のウイルスが付着している恐れがある。現場で働く人からは「リスクを減らすため、ゴミ袋をきっちり縛るなど捨てる際のマナーを徹底してほしい」と切実な声が上がる。
大阪府で回収を委託されている民間業者の20代男性従業員は4月下旬の朝、住宅街に捨てられた可燃ゴミを前に作業の手を止めた。袋の中には不燃の折りたたみ傘が入っていたのだ。軍手をした手で取り出そうとしたところ、袋には使用済みのマスクやティッシュがつまっていた。「感染者のものだったら」。不安がよぎった。
男性の勤務は週6日。1日約3000袋を回収する。ゴミ収集所に使用済みマスクが「ポイ捨て」されている光景も日常茶飯事だ。「家族にうつしてしまうかも」。4人の幼い子どもと妻の顔が浮かぶ。
東京都で清掃員として働く滝沢秀一さん(43)はペットボトルの回収作業が最大の恐怖だ。自治体によってはゴミ袋ではなく、専用ネットに直接入れるケースもあり、そこから取り出す必要がある。飲み口が開いたボトルに触れる機会は多い。滝沢さんは「作業する誰かが感染して、いつ職場に広がってもおかしくない」と危機感を募らせる。
環境省によると、自治体職員を除いた一般廃棄物の収集を扱う民間の清掃員は約23万人いる。同省は3月末、家庭ゴミから清掃員が感染する可能性もあるとして、一般家庭に向けたパンフレットを作製。ゴミ袋がいっぱいになる前に早めに捨てる▽ゴミ袋はしっかり縛る▽使用済みのマスクやティッシュを触った手でゴミ袋に触れない――などと呼び掛けている。
清掃員のマスク不足も深刻だ。都内のある清掃事務所は従業員にマスクを制限なく支給できていたが、3月中旬からは1日1人1枚とした。在庫は底を突きそうだが購入のめどは立っておらず、補充できなければ自前で準備することになる。
感染経路は不明なものの、神戸市環境局須磨事業所では4月23日までに清掃員13人が感染した。事業所は20日に閉鎖され、業務を別の事業所が受け持つ事態になった。滝沢さんは「ゴミ収集は医療と同様に人々の生活に欠かせない仕事。マスクを優先的に配布するなどの支援があってもいいのでは。一般の方もゴミ出しのルールをきちんと守ってほしい」と呼び掛ける。
家庭ゴミの量も増加
外出自粛が続くなか、家庭ゴミの量が増えていることも清掃員の負担増につながっている。
3月の可燃ゴミの量は札幌市で前年同月比13・4%増、千葉市で同4・6%増だった。東京23区や名古屋市でも同様に増加した。名古屋市の担当者は「自宅にいる時間が長くなった影響か、可燃ゴミやペットボトル、粗大ゴミなどいずれも増えている。大変な時期だからこそ、分別に協力してほしい」と呼び掛ける。
緊急事態宣言が出てからはさらに在宅勤務の人が増えた。大阪府内の男性清掃員は「家庭ゴミの量は以前の1・5~2倍に感じる。疲労が抜けず、大量の汗でマスクも息苦しい。夏場にかけてゴミが増え続けたらどうなるか」と嘆く。【二村祐士朗、成田有佳】