「自然は逃げません」「訪れないやさしさを」 離島「GWは来ないで」命がけの訴え

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、各地の離島が大型連休期間中の来島自粛を観光客らに求めている。人の移動で感染が広がれば、地域の医療体制が危機に陥る恐れがあるためだ。観光を地域経済の大きな柱にする島も多いが、水際対策に取り組む関係者は「今は来島を控えて」と呼びかける。
例年は美しい海での休暇を楽しもうと、石垣島や宮古島などの離島にも大勢の観光客が押し寄せる沖縄県。県内の感染者は141人で、玉城(たまき)デニー知事はほぼ連日、記者会見で「離島県の沖縄県は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)だ。今は来県を我慢していただきたい」と発信してきた。国土交通省によると、県外からの航空便には27日時点で約1万5000人分(29日~5月6日)の予約がある。全日空(ANA)の担当者は「減便と外出自粛要請で旅行控えになっている」というが、県は観光客の流入に危機感を募らせる。
県内には感染症に対応できる医療機関がない小規模離島も多い。竹富島や西表島など九つの有人島を抱える竹富町からの要請を受け、町内の島と石垣島を結ぶ定期船の船会社は5月1~6日を全便運休とした。町の担当者は「現在も観光客が島に来ている。大型連休中はさらに増える恐れがあり、感染を防止するために異例の要請に踏み切った」と語る。
年間約45万人が訪れる鹿児島県奄美大島も事情は同じだ。奄美市では17日に同居する男女2人の感染が初めて確認され、このうち40代男性は、後に感染が分かった埼玉県の男性と一緒に釣りをしていた。奄美大島の感染症指定医療機関のベッド数は4で、人の移動に伴う感染を警戒する。奄美市でツアーガイドを務める常田守さん(66)は大型連休中のガイドの予約は全て断っているといい、「コロナが落ち着いてから来てほしい。奄美の自然は逃げません」。
感染者が確認されていない自治体も神経をとがらせる。五島列島にある長崎県五島市は、野口市太郎市長が「皆様の『訪れないやさしさ』で、島をお守りください」と呼びかける動画を作った。フェリーなどを運航する船会社も乗客を検温するなど対策に躍起だ。世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する教会を訪ねる人も多いが、市の担当者は「市民感情の面から『お越しください』と言えない歯がゆさがある」と漏らした。
全国にある有人離島は400超。重症化のリスクが高いとされる高齢者も多く、礼文島(北海道)や佐渡島(新潟県)など全国各地で来島自粛を呼びかける動きが広がっている。【遠藤孝康、神田和明、中山敦貴】