【ニッポン放送・飯田浩司のそこまで言うか!】「政策を説く」「アピール力」ではどちらが効果的? 切り取り、揶揄、批判が習い性の“有事のメディア像”

私が担当しているニッポン放送のニュース番組「OK! Cozy up!」(平日午前6時~)では先週、「コロナとの戦い最前線」と題して関東1都3県の知事にインタビューしました。
危機に際して、それぞれのリーダーが、どういった姿勢でアプローチしていくのか、メディアにどういったメッセージを発信していくのか。共通する部分と、違う部分が浮き彫りになって、非常に興味深いインタビューでした。
共通する部分は、「移動自粛のお願いをする」ということ。特に、これから大型連休を迎えるにあたって、各知事は強く自粛を要請していました。
一方、その訴え方は千差万別でした。政策を一つ一つ緻密に取り上げて訴える知事もいれば、大枠を示しながら熱く訴えかける知事もいる。キャッチフレーズを使って浸透を図る知事もいました。大きく分ければ、「政策を説くのか」「アピール力で訴えるか」の違いだろうと思います。
では、この有事では、どちらが効果的なのでしょうか?
1つの例が、「アベノマスク」です。
拙コラムで少し前に触れましたが、この「1世帯布マスク2枚配布」には明確な狙いがありました。市中で品薄になっているマスクを配布することで、マスクを求めて行列ができてクラスター化することを防ぐ。かつ、買い占めなどで市中に出回らないマスクの価値を下げて買い占めを無効化させ、本当に必要な医療現場にマスクが行き渡るようにする。
以上を説明しますと、当初反対でも納得する方もいらっしゃいました。実際に「アベノマスク」の配布以降、ネットの取引では、マスク1枚当たりの値段が下がってきているそうで、不思議なことに「ない」と言われた在庫が随分と出現してきているようです。
その意味で、政策の狙いは間違っていなかったわけですが、一部では、いまだに非常に評判が悪いのも事実です。
政策は正しくとも、その説明が中途半端でアピール力に欠けていた点、その結果、セットになっていた政策から「マスク2枚」が切り取られてしまったことがこの不評につながっています。
結局、切り取りを防ぐには、政策をつらつらと説くよりもアピール力で訴える方が有効のようです。ただ、「ワンフレーズのみ」「アピールのみ」で詳細の説明を省くと、政策を議論する場がどんどんと細っていきます。いざ実行する段になって、あやふやだった部分がネックになることも十分考えられます。
本来であれば、政策の狙いや実行可能性も含めて吟味し、議論することで理解を深めるのもメディアの役割だと思います。
しかし、多くのメディアは、切り取り、揶揄(やゆ)し、批判することが習い性のようになってしまっています。「有事のリーダー像」の議論はよくされますが、並行して「有事のメディア像」の議論が必要だろうと強く感じました。
■飯田浩司(いいだ・こうじ) 1981年、神奈川県生まれ。2004年、横浜国立大学卒業後、ニッポン放送にアナウンサーとして入社。ニュース番組のパーソナリティーとして、政治・経済から国際問題まで取材する。現在、「飯田浩司のOK!COZY UP!」(月~金曜朝6-8時)を担当。趣味は野球観戦(阪神ファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書など。