営業続けるパチンコ店に常連客続々「混雑していて良い席ない」

政府による緊急事態宣言の延長決定を受け、兵庫県は4日、県庁で開いた対策本部会議で、不要不急の外出自粛や事業者への休業要請を31日まで継続することを決めた。井戸知事は記者会見で、「今は感染拡大を抑えられるかどうかの瀬戸際にある」と理解を求めたが、行動や経済活動への制限が続くことには不安も広がっている。(山本貴広、安田弘司)
井戸知事は対策本部会議の終了後、県庁で記者会見し、緊急事態宣言の延長に伴う新たな県の対処方針を公表した。
新たな方針では、県民に対し、31日まで引き続き外出自粛を求めるほか、東京、大阪など人口密集地域との往来、府県域を越えた移動を控えるよう要請。企業には在宅勤務を促し、通勤者を7割減らすことを求めた。
民間事業者への休業要請についても、同様に期間を延長することを決定。対象となる施設も、生活必需品以外を扱う商業施設のほか、ナイトクラブやカラオケ店、映画館、パチンコ店など従来通りとし、地域も引き続き県内全域を対象とした。
一方、大型連休中(4月29日~5月6日)の休業を求めていた有馬温泉や城崎温泉などの旅館やホテル、小規模な学習塾については、7日以降、要請を解除する。
井戸知事はここ1週間の県内の感染者数が、おおむね1桁台で推移していることを踏まえ、「宣言から1か月、県民とともに努力を重ねてきた成果が上がってきている」と強調した。
医療体制については、感染者用の病床を39病院に509床確保し、500床としていた目標を上回ったことを明らかにした。3日時点の入院患者は重症者21人を含む201人で、病床の使用率は40%を下回り、4月21日時点の84%から大きく改善した。
井戸知事は「病床が確保できており、今後の感染者数によっては緊急事態の見直しも検討する」と述べ、緊急事態宣言に伴う制限を前倒しで緩和する可能性があることを示唆した。

賃料など経費かかる/補償にスピード感を

兵庫県内では、緊急事態宣言の延長に理解を示す意見がある一方、外出自粛や休業要請が長引くことに不安の声が相次いだ。
同県尼崎市の尼崎中央商店街でレンタルスタジオを経営する女性(51)は、2月中旬の開業直後に新型コロナウイルスの影響で休業を余儀なくされた。4月上旬から店頭にミシンを据えて布マスクを売る女性は「延長は仕方ないが、店の賃料などの経費はかかる。いつまでもマスクを売るだけではしのげない」と困惑していた。
同県洲本市内の食堂は緊急事態宣言後、客足が落ち込み、4月の売り上げは7割前後も減少。テナント賃料や6人いる従業員の給与などの経費を賄えず、金融機関の融資でしのいだ。店主の女性(43)は「延長は覚悟していた。でも、今後どうやって生活していけばいいのか。国にはスピード感のある補償や支援をお願いしたい」と訴えた。
一方、県の休業指示に応じず、営業を続ける神戸市内のパチンコ店には、多くの常連客らが詰めかけた。神戸市灘区の「フェニックス摩耶店」を訪れた大阪市内の会社員男性(46)は「あまりに混雑していたので良い席が見つけられず、何もせずに店を出た。休業する店が多いと、数少ない営業中の店に人が集まる。早く緊急事態宣言が解除されてほしい」と話した。

◆記者会見での井戸知事との主なやりとりは次の通り。
――緊急事態宣言の延長をどう受け止めるか。
「まだ解除する段階ではない。どこかの県を外すと、そこに人が集中する恐れがある。全国を対象としたのは適切な措置だ」
――今回の県の対処方針を見直す基準や時期は想定しているか。
「想定していないが、発症者数の推移がポイントだ。ただ、兵庫と同じ特定警戒都道府県の大阪府、京都府とは移動や交流の同一地域でもあるので、十分に調整しなければならない」
――休業要請の期間を延長するが、応じた事業者への支援金は拡充しないのか。
「現時点では考えていない。休業補償の枠組みは国が示すべきだ。国に対して要請していく」