現在審議中の検察庁法改正案で“渦中の人”となっている東京高検の黒川弘務検事長(63)宛てに、カッターナイフの刃などが入った封筒が届いていたことが14日、捜査関係者への取材で分かった。高検は警視庁丸の内署に被害を届け出ており、同署は脅迫容疑で捜査している。
捜査関係者によると、封筒は13日午後に東京都千代田区の東京高検に送達。刃渡り約7センチの刃1枚と、A4サイズの紙1枚が入っていた。封筒の裏や紙の末尾には、差出人の名前と住所が記入されていた。
紙には森友学園問題を巡り背任や文書改ざんなどの疑いで告発された佐川宣寿元国税庁長官を大阪地検特捜部が不起訴にしたことについて「(黒川氏が)大阪地検に圧力をかけて不起訴にした」などと印字されていたという。ほかにも「次の検事総長だと」「国民をなめんじゃねぇ」などの記述もあった。高検は同問題に絡み、改ざんに関与した財務省の幹部らを不起訴処分としていた。
黒川氏は政界に近いとされており、定年直前の今年1月に異例の人事といえる半年間の定年延長が閣議決定。今回の改正案も、黒川氏が検察トップの検事総長に就任可能とするためのものと野党が批判しているほか、ツイッターでも著名人らからの抗議が相次いだ。安倍晋三首相はこの日、黒川氏の人事について「まだ決めていない。今の段階では申し上げることはできない」と述べた。
一方、東京地検特捜部在籍時にロッキード事件の捜査に従事した松尾邦弘元検事総長(77)ら検察OBが、改正案に反対する意見書を法務省に提出することをこの日、表明した。同事件に携わり、田中角栄元首相を逮捕した元検事ら十数人が賛同する見通しで、15日に提出する。政府提出法案に元検察トップらが具体的に行動を起こして反対姿勢を示すのは、極めて異例。法務・検察内には「OBが要望なんて前代未聞だ」と動揺が広がっており、改正案への批判の声がいっそう強まりそうだ。