新型コロナウイルスの感染拡大で、離島のある自治体は強い危機感で対策に臨んだ。重症化リスクが高いとされる高齢の住民の割合が大きく、医療体制も脆弱(ぜいじゃく)なためだ。香川県多度津町は、瀬戸内海に浮かぶ高見島、佐柳(さなぎ)島への不要不急の訪問を控えるよう要請。フェリー会社も、乗船前に乗客の体温測定をし、船内では離れて座るよう注意を促す。緊急事態宣言は解除されたが、気兼ねなく行き来できる状態になるまで関係者の努力は続く。
37・5度以上は乗船不可
高見島、佐柳島に向かうフェリーが出発する多度津港。乗り場では、三洋汽船(岡山県笠岡市)の担当者が、フェリーを待つ人の額に体温計をかざす。37・5度以上あれば、乗船券は買えない。
乗船券の販売窓口には注意喚起の貼り紙を掲示。感染予防のためマスクの着用や、乗客が互いに距離を確保するよう促している。船内にはアルコール消毒液を設置し、乗船、下船時の手や指の消毒も訴える。いずれも多度津町の呼びかけを受けた取り組みという。
町は4月14日、「高見島・佐柳島へ渡航予定の皆さまへ」と題した文書をホームページで公開。発熱やせきの症状のある人や体調の優れない人、新型コロナウイルス感染の可能性が考えられる症状がある人に対し「渡航をお控えください」とした。また、症状のない人についても、不要不急の渡航を自粛するよう依頼。渡航の際は感染防止策を徹底するよう求めた。
4人に1人以上が高齢者
背景には、高齢化が進み医師が常駐しない島で感染が広がれば、島民の命や生活が脅かされるとの危機意識がある。高見島の住民は34人で高齢化率は76・5%。67人が住む佐柳島の高齢化率は90%を超える。いずれの島にも診療所しかなく、医師がやってくるのは週1日にとどまる。
「万が一、島で感染が広がったら大変な事態になる」。90代の両親が高見島に住む香川県丸亀市の主婦(66)は不安を募らせる。両親の食事や入浴を手助けするため、女性は定期的に島を訪れる。
近くに呼び寄せれば負担は減るが、「島を離れることによって生活のリズムが崩れてはいけない。健康のための散歩も、住み慣れた島なら自由にできる」と変わらぬ生活を希望する両親の意思を尊重する。
以前はほぼ毎日通っていたが、最近は回数を減らした。島に行く日は必ず自宅で体温を測定し、体調を確認。乗船前の検温は「新型コロナウイルスを島に持ち込まないためには必要。安心にもつながる」と受け止める。
営業再開は「慎重にしたい」
一方、佐柳島に住む男性(46)は、経営するゲストハウスを4月上旬から閉めている。宿泊客を迎えられる状態になった際に「気持ちよく過ごしてもらいたい」と、それまで手が回らなかった場所の大掃除や草刈りに汗を流す。
穏やかな瀬戸内海が目の前に広がるゲストハウスは島で暮らすネコとの触れ合いを楽しめ、ゆったりした時間を過ごせると評判。東京や大阪から訪れる客がほとんどとあって「来島を控えてもらおう」と早い段階で休業に踏み切った。
緊急事態宣言の全国拡大や町の呼びかけに応じ、休業期間を大型連休まで、5月末までと段階的に延ばした。県の休業要請は終了し、香川を含む39県では14日に緊急事態宣言が解除されたが、男性は「お年寄りが多い島なので、営業再開については慎重に判断したい」。さらなる休業延長も視野に入れている。