国内外に多くのファンがいる京都アニメーションがなぜ標的になったのか。ゆかりの人らは改めて怒りを口にし、真相解明を求めた。
たまこまーけっと
京アニ作品「たまこまーけっと」の聖地として知られる京都市上京区の出町桝形(ますがた)商店街。商店街の店でつくる事業組合の理事長をつとめる鋸屋(おがや)慎三さん(69)は、青葉真司容疑者の逮捕について「なぜこんなことをやろうと考えたのか。動機が解明され、真相を本人の口から話してほしい」とした上で「京アニが再建する姿を商店街として見守りたい」と話した。
たまこまーけっとは、商店街を舞台に高校生の日常をコミカルに描いた作品。主人公が暮らす「うさぎ山商店街」のモデルが出町桝形商店街だ。商店街の組合によると、舞台の選定は、京アニと京都文化博物館の働きかけで決まった。
平成25年のテレビ放映後、多くのファンが「聖地巡礼」として訪れるようになり、同商店街には訪れたファンらが思いを書き込む交流ノートもある。商店街は発生翌日から、《皆さまの創作活動がまた花開くことを》などと犠牲者に哀悼の意を示す約300字の横断幕を掲げた。
けいおん!
「あらためて被害にあわれた方々の冥福を祈るとともに、今後、真相を明らかにしていただきたい」と語るのは、滋賀県豊郷町産業振興課課長の山田篤史さん。同町にある豊郷小学校旧校舎群は、軽音楽部を描いた京アニ作品「けいおん!」に登場した校舎のモデルとされ、作品をきっかけにした高校生バンドの全国大会も開催されている。
訪れる人の約8割は作品のファンで、事件発生後には献花台を設置。多くの花やイラストなどが手向けられた。山田さんは「手向けられた花などの多さに、作品がいかに愛されていたのかを実感した」と話した。
遺族や被害者、関係者を気遣う声も聞かれた。吹奏楽部を描いた作品「響け!ユーフォニアム」の舞台となった京都府宇治市。聖地巡礼のファンが集う「宇治市観光センター」を管理する同市観光協会の兼井茜さん(23)は「(青葉容疑者の逮捕で)事件の恐怖を思い出してしまう人がいるかと思うとつらい」とおもんぱかる。
同センターも事件後、ファンのために追悼用のノートを設置。犠牲者への感謝や事件の悲しみなどをつづったメッセージは約850件寄せられ、ノートは4冊にも上った。現在は新型コロナウイルスの影響で休館中だが、兼井さんは「これからもファンの思いを受け止める場所でありたい」。
涼宮ハルヒの憂鬱
また、同市の宿泊施設「亀石楼(かめいしろう)」は、作品「クラナド アフターストーリー」に登場した。主人公が泊まった部屋と同じ名前の客室を指定する宿泊客もいるという。新型コロナの感染拡大の苦境で、クラウドファンディングで支援を募ったところ、国内外のファンから多くの支援が寄せられた。亀石楼の金丸公大さん(25)は「海外からも応援を頂けたのは作品があったからこそ。京アニの優秀な人材を奪った犯人が許せない」と憤る。
人気作「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」の舞台となり、実在の喫茶店や高校などがモデルとなった兵庫県西宮市の西宮観光協会の担当者は「ファンもみんな悲惨な事件の全容解明を望んでいる」と話す。同協会は事件後の昨年7~8月にかけ、市内数カ所に京アニ支援のための募金箱を設け、集まった総額約170万円を寄付。担当者は「作品を通じて市内に来てくれる人も多く、街もにぎわった。京アニにはこれからも多くの人を笑顔にする作品を発表してほしい」とエールを送った。