がん免疫治療薬「オプジーボ」の特許使用料の分配額を巡り共同開発した本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授と小野薬品工業(大阪市)が対立している問題で、本庶氏は5日、小野薬品を相手取り分配金約226億円の支払いを求める民事訴訟を大阪地裁に起こす方針を明らかにした。6月中旬に提訴する。
訴えるのは、小野薬品などが米製薬会社「メルク」を相手に国内外の裁判所で起こした特許侵害訴訟で、和解時に決まった特許使用対価の配分に関する件。本庶氏はこの訴訟で小野薬品に協力したが、「小野薬品がメルク社から受け取る額の40%」の支払いを受ける約束があると主張。今回の訴訟では、小野薬品が既に支払った1%分を除く39%分(約226億円)を請求する。
「信頼していたが残念」
本庶氏は5日、京大で開いた会見で「信頼していたが残念。(小野薬品は)言ったことを引っ込めたり、違うことを言ったりしている。そろそろ決着をつけないといけないと(提訴を)決意した」と述べた。
本庶氏らの研究グループは1992年、たんぱく質「PD―1」を発見し、免疫にブレーキをかけていることを突き止めた。この発見は「オプジーボ」の開発などがん治療に大きく貢献したとして、2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した。
本庶氏側によると、本庶氏と小野薬品は06年、オプジーボの売上高の0・75%前後を特許の対価として受け取る契約を結んだ。その後、本庶氏が「不正確な説明で、信じられないほど低い額で契約してしまった」と不服を表明。11年から配分率の再交渉が始まったが、合意に至っておらず、すでに支払われた対価(総額約36億円)の大半の受け取りを拒否している。本庶氏側はメルク社和解関連のほか、06年の契約の妥当性などについても提訴する姿勢を示している。
オプジーボは小野薬品の主力商品。20年3月期の連結決算によると、オプジーボの売上高はロイヤルティー収入を含め約1682億円で、全売上高の6割近くを占める。小野薬品は19年5月に発表したコメントで「特許に関する契約は、本庶氏と当社が合意の下に締結した」と正当性を主張している。本庶氏の提訴意向について同社の広報担当者は「内容を正確に把握していないのでコメントは差し控える」としている。【松本光樹、福富智、近藤諭】