「あおり運転」による通行妨害行為に新たな類型を加え、危険運転致死傷の処罰対象を拡大する改正自動車運転処罰法が5日、参院本会議で可決、成立した。走行中の車の前方に停止するなどして相手に接近する行為を危険な運転とみなし、2類型を創設した。7月までに施行される。
危険運転致死傷は、飲酒運転など故意による危険な運転で人を死傷させた場合に成立する。急な割り込みや幅寄せなどの行為は既に類型化されているが、加害者が危険な高速度で運転した場合に限られており、適用範囲が限定的とされてきた。このため改正法では、加害者には速度要件を設けない2類型の通行妨害行為を、新たに危険運転致死傷に盛り込んだ。
一つは、走行する車の前方で停止したり、減速したりして、死傷事故が起きる恐れのある速度で走る相手車両に著しく接近する行為。急な車線変更で割り込んで急ブレーキを踏むといった運転に伴う事故を想定している。もう一つは、高速道路や自動車専用道路で、車線上に停止するなどし、走行する車を停止または徐行させる行為。原則駐停車が禁じられている道路では車が止まっている状況を予見できず、回避も困難とされるため、第三者を巻き込む重大死傷事故につながるとした。
2類型とも、通行を妨害する目的があり、停止などの運転行為と人の死傷との間に因果関係が成立する場合に適用する。相手にけがをさせた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上の有期懲役を科す。
あおり運転は2017年6月に発生した東名高速での夫婦死亡事故を契機に社会問題化した。被告から繰り返しあおり運転を受け、追い越し車線上に停止させられた夫婦の車に後続のトラックが追突した悲惨な事故を巡り、厳罰化を求める声が高まっていた。
今国会では、不必要な急ブレーキや車間距離不保持などを妨害運転と規定し、免許取り消しなどとする改正道路交通法も成立した。改正自動車運転処罰法とあわせ、事故の未然防止と、事故を起こした場合の重罰という両面から、あおり運転に強い警告を発する形となる。【村上尊一】