新型コロナウイルスの患者を受け入れた病院や、専門外来を設置した病院を中心に、患者の受診控えや、職員やその家族への差別的対応が起きていることが、新潟県内全病院を対象にした新潟県のアンケート調査でわかった。県は「医療関係者に対する中傷やいじめは決してしないで」と強く呼びかけている。【井口彩】
調査は5月12~20日、病床が20床以上の全病院を対象にメールで実施。101病院(回答率80.8%)から回答を得た。このうち、新型コロナの患者受け入れ病院と、専門外来「帰国者・接触者外来」設置病院の計30病院は全てが回答した。
全病院を対象に風評被害の影響(複数回答可)を尋ねたところ、最多は「特になし」(57%)だったが、「患者の減少」が34%、「職員やその家族への誹謗(ひぼう)中傷」が8%、「その他」が12%あった。新型コロナの患者受け入れ病院と専門外来設置病院に対象を限ると、「患者の減少」が57%と「特になし」(27%)を上回り最多に。「誹謗中傷」は23%、「その他」も23%と、それぞれ増えた。受診控えや職員への偏見、差別が影響しているとみられる。
「その他」の回答で具体例を挙げてもらうと、職員が他院を受診する時に感染を気にされた▽職員の家族が、勤務先から感染していないことを示す安全確認書の提出を求められた▽美容室に予約を断られた▽保育園の卒園式への出席を拒否された▽東京からの出張医がタクシー乗車拒否にあった――などがあった。
新型コロナによる医療関係者への偏見や差別は、全国で問題になっている。日本医療労働組合連合会(医労連)が全国の病院の組合を対象に4月に行った実態調査でも、差別的対応が「ある」と答えたのが1割あった。
県は今回の結果を国への要望などに反映させるほか、差別的な対応をしないよう業界団体などに求めていく。松本晴樹・県福祉保健部長は「実際に県内でも風評被害があったというエビデンスができた。さまざまな業界と組み、県民に(医療従事者の)声を届けていきたい」と話した。