東京・足立区の荒川河川敷で3日に捕獲され、同区内の施設に一時保護されていた野生のシカが8日、千葉・市原市の動物園「市原ぞうの国」に引き取られた。今後は同園で飼育される。
足立区がシカの引き取り先の動物園を探していたところ、同園が5日に相談を受け、同日中に引き受けることを決断。土日を経て、この日午前に移送された。引き取り手がない場合は殺処分の可能性もあっただけに、同園は「シカの命を守るため、引き受けさせていただきました。『ケープくん』と名付ける予定です」とコメント。名前は坂本小百合園長が「エスケープ(逃げること)してきた子だから、ケープくんね」と即決したという。
シカは体長約1・5メートルのオス。3日の捕獲後、足立区には「(個人で)シカを引き取りたい」「なぜ山に帰さないのか」など、殺処分回避を求める電話やメールが殺到した。しかし、鳥獣保護管理法で野生動物をペットとして飼養することは違法とされ、害獣であるシカは野生に返すこともできないといい、同区は対応に頭を悩ませていた。
野生のため病気を持っている可能性もあり、引き取るのに難色を示す動物園もあったという。市原ぞうの国は、野生のシカを引き取るのは初めてだが、今後2週間程度かかるとみられる検疫をしっかり行い、性格なども見極めた上で一般公開の時期や方法を検討。公式ホームページで発表する予定だ。
同園は新型コロナウイルス感染拡大の影響で4月13日から46日間臨時休園。動物たちの暮らしの維持費として月約2000万円が必要といい、応援支援金を募りながら、5月29日から時間を短縮して再開している。ケープくんについて担当者は「人間を怖がったりしないので、足立区で大切に保護されていたのだと思う。ゾウや他の動物たちのように、お客さんからエサをもらうなどして触れ合ってもらえたらいいですね」と話した。(竹内 竜也)
◆市原ぞうの国 1989年、千葉・市原市山小川に「山小川ファーム動物クラブ」として開園。96年に名称を「市原ぞうの国」に変更。ゾウは日本の動物園で最多となる13頭がおり、書き初めをする「ゆめ花」が有名。昨年9月には台風15号による停電で一時休園も、全国から支援の発電機が届けられ、営業を再開して話題となった。シカも同じ市原市山小川の姉妹園「サユリワールド」で12~13頭飼育している。
◆シカの捕獲、移送までの経緯
▽5月31日 東京・板橋区内で目撃される
▽6月2日 足立区の荒川河川敷の鹿浜橋付近に出没。ドローンなどを使って捕獲を試みるも、逃げられる
▽同3日 足立区の荒川河川敷の堀切橋付近で目撃される。警察官ら30人以上で網を使って捕獲。同区内の施設に一時保護される
▽同4~5日 足立区に主にシカの殺処分回避を求める電話やメールが殺到。5日に市原ぞうの国が引き取ることを決断
▽同8日 市原ぞうの国に移送