北朝鮮拉致問題 交渉重ね首脳会談を模索せよ

北朝鮮による拉致被害者と、その家族は高齢化している。救出を急がなければならない。
拉致被害者の横田めぐみさんの父、滋さんが87歳で亡くなった。妻の早紀江さんとともに被害者の救出活動に取り組み続け、帰国を望む家族の象徴的存在だった。
13歳の娘が突如、消息を絶ったのは1977年のことである。その後、北朝鮮に拉致された疑惑が浮上し、救出へ向けた長く厳しい道のりが始まった。
97年に被害者家族連絡会の代表に就き、早紀江さんと全国を飛び回った。年100回を超える講演では、「皆さんが関心を持てば政府は動く」と訴えた。穏やかで誠実な言動が共感を呼んだ。
拉致は、北朝鮮による重大な国家犯罪である。だが、政府の動きは鈍かった。2002年の日朝首脳会談で被害者5人の帰国が実現したのは、夫妻の活動が国を突き動かしたからにほかならない。
政府は、拉致被害者として17人を認定している。帰国していない12人の親で健在なのは、早紀江さんと、有本恵子さんの父親の2人だけとなった。
膠着
( こうちゃく ) 状態にある拉致問題の交渉を前進させることは急務だ。
安倍首相は、条件を付けずに金正恩朝鮮労働党委員長と会談する意向を示している。圧力重視の路線を転換したのは、家族らの状況を踏まえ、早期に事態を打開したいとの思いからだろう。
北朝鮮は未帰国の12人に関し、めぐみさんら8人は死亡、4人は入国していないと主張する。
その説明は

信憑
( しんぴょう ) 性に欠ける。北朝鮮が、被害者とは別人の「遺骨」を提出したこともある。不誠実な姿勢は看過できない。
曲折を経てきた拉致問題を解決するには、トップ同士で会い、決着を図るしか道はあるまい。
政府は様々なルートを通じ、北朝鮮に首脳会談を働きかける必要がある。金委員長につながる人脈を探ることが肝要だ。
日本は、拉致、核、ミサイルの問題を包括的に解決し、国交正常化につなげることを原則としている。正常化の道筋がつけば、北朝鮮が求める経済支援も可能になろう。

緻密
( ちみつ ) な戦略が欠かせない。
日本の要請を踏まえ、トランプ米大統領は、2度の米朝首脳会談で拉致問題を提起した。引き続き米国に協力を求めたい。
近年、拉致問題に対する世論の関心は高いとは言えない。政府は、国際社会や日本国内での広報戦術を立て直すべきだ。