◆小池都知事の疑惑で話題に上がるカイロ大学
東京都知事選挙を7月5日に控え、再燃している小池百合子東京都知事の「学歴詐称疑惑」。6月8日にはカイロ大学が「小池氏が1976年に卒業したことを証明する」と声明を出し話題となった。
これまで、小池都知事が疑惑に対し明確な回答を避けてきたことや、エジプト語が話せないのではないかという検証、そして学歴詐称が明らかになれば「公職選挙法違反になる」ことが報じられてきた。
もともとエジプトという国自体が日本人にとってはベールに包まれた存在であり、「カイロ大学」と言われてもピンとこない人は多いだろう。そこで今回は大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に「カイロ大学とはどのような大学なのか」を聞いた。
◆カイロ大学の国際的な評価は?
まず、カイロ大学は世界水準でどのような立ち位置にあるのだろうか。
「カイロ大学を『世界大学ランキング(注1)』で見てみると、668位にランクインしています。この668位に近い順位にランクインしている日本の大学を見てみると、岡山大学が683位にランクインしています。そのため、カイロ大学と岡山大学の偏差値が同じくらいなのではないか、と考えられなくもないのですが……。そもそも大学受験における偏差値はあくまで日本国内のものであって、厳密には他の国とレベルを比較するのは難しいと思います」(石渡氏、以下同)
注1:「RANKING WEB OF UNIVERSITIES」2020年版
そもそもこの『世界大学ランキング』は、各国で異なる教育レベルなどもごちゃまぜにしてランク付けしており、さらにはっきりした指標を設定することが難しく、どうしても無理やり感があるものなのだと言う。上位にはハーバード大学やスタンフォード大学などがランクインしており、そこに対する違和感はないものの、下位になればなるほど客観的な順位付けの根拠が難しくなってくるのだそうだ。
「そこで、アラブ圏に限ったカイロ大学の立ち位置について考えてみたいと思いますが、エジプト国内もしくはアラブ圏ではカイロ大学はトップクラスの大学、つまり日本で言うところの東大のような立ち位置だと認識されています。実際に古代エジプトの研究者が世界中から集っており、難関大学として位置づけられているのは明らかですね」
◆1976年当時、カイロ大学を卒業する意義とは?
そもそも、1970年代にカイロ大学を卒業するということは、当時としてはどのような意義があったのだろうか。
「まず、カイロ大学卒業という肩書きがかなり珍しい部類だと思います。1970年代は日本から海外に留学する研究者や大学生が増えていった時期ではありますが、ほとんどは欧米への留学が中心でした。そんな中、アラブ諸国への留学というのは相当珍しいことだったはずです」
その戦略が功を奏し、小池都知事は当時から現在に至るまでその「異色の経歴」ゆえに注目されてきたことも多くあった。
◆日本とは異なる教育水準
とはいえ、安易に「日本の東大レベルの大学を卒業したからすごい」とは言えないと石渡氏は話す。
「文部科学省がホームページに『エジプトにおける教育の状況』として掲載した文書(注2)によると、エジプトの教育状況は日本と比べるとあまりよくないとされているようです。実際、海外では『学位製造』と呼ばれる、教育の実態がなくても学位を出すという行為はよくあること。日本の大学は文科省の許認可事業ということもあり、『学位製造』は絶対にありえないことですが、海外では頻繁に行われており、そのあたりが日本と海外では違うと考える必要があるかもしれません」
注2:エジプトにおける教育の状況とエジプト日本教育パートナーシップ (Egypt-Japan Education Partnership: EJEP) (在エジプト日本大使館 一等書記官 星野有希枝) 2017年
現在はともかくとして、海外ではある時期まではこうした「学位製造」が行われていた実態があり、ゆえに1970年代に小池都知事が本当に難関のカイロ大学で学位を取得するだけの学力があったのかということは、確かめようがないと石渡氏は指摘する。
「小池都知事がカイロ大学に留学したことは確かなのでしょう。しかし、そこでどれだけの成績を収めたかは40年以上前の話なので、今となっては証明のしようがありません。日本の大学なら卒業生の名簿を管理していると思いますが、日本より教育レベルが高いとは言えない国のことなので曖昧になっている可能性はあると思います」
さらに、石渡氏はこの騒動についてこう話す。
「本当に卒業証書があるならば出せば済む話です。それをずっと拒絶し続けていたのは一般的には理解しがたいと思われてしまっても仕方がありませんよね。『卒業しました、でも卒業証書は出しません』が通じてしまうのであれば、学歴詐称が蔓延してしまいます。
さらに、6月8日にカイロ大学が声明を出したとのことですが、大学側が声明を出したから解決とはいえず、『今はしっかり都知事の仕事をしているからいいじゃないか』ということでもありません。あくまで公職に就かれる方ということで、学歴詐称を認めてしまうと公平性が担保されないということになってしまうと思います。公職選挙法に抵触するということは、つまり『本人に悪意がなくともワイロを渡した』と同じ事であり、有権者に対する背信行為になってしまうのではないでしょうか」
カイロ大学側が声明を出した以上、「学歴詐称かどうか」という議論はできなくなった。しかし、公職である都知事としては都民の納得のいく説明をしてほしいと切に願う。
<取材・文/日刊SPA!編集部>