2017年7月の九州北部豪雨の災害復旧工事を巡り、福岡県朝倉市が発注した工事で事業費用を増額する便宜を図った見返りに現金を受け取ったとして、県警は14日、市都市計画課建築係長、鎌田好輝容疑者(49)=同市上秋月=を収賄容疑で、工事を受注した下請け業者の九州防水(同県久留米市)の役員で統括部長の山口慎二容疑者(49)=福岡市博多区東那珂2=を贈賄容疑で逮捕した。県警は15日、朝倉市役所の本庁舎などを家宅捜索した。
7月5日で発生から3年となる九州北部豪雨の復旧工事を巡る贈収賄事件の立件は初。県警は2人が、緊急性の高い災害復旧工事では入札でなく市が業者を指定する随意契約の制度上の仕組みを悪用し、事業費用を操作したとみて調べる。
容疑は、豪雨による山林崩壊で朝倉市黒川地区の道路などに残った土砂の撤去工事について、19年4月下旬ごろ、事業費用を増額させたことなどへの謝礼として、鎌田容疑者が山口容疑者から現金100万円を受け取り、2人で出かけた韓国旅行で山口容疑者が鎌田容疑者の航空券代約2万円を支払ったとしている。関係者によると、2人は容疑を認めているとみられる。
県警によると、鎌田容疑者は事件当時、市の災害対策担当の係長で復旧工事に精通し、発注業務に一定の影響力があった。鎌田容疑者は、黒川地区の土砂撤去工事の情報を知った知人の山口容疑者の依頼を受けて工事区域を広げることで事業費用を増額した上、非公表の実施設計書を山口容疑者に渡したとみられる。
工事は市が随意契約で19年5月に市内の建設業者に発注。事業費用の見積額が約1億2939万円だったのに対し、業者は1億2744万円の金額を示して受注した。落札率は98・49%だった。九州防水は唯一の下請け業者として工事に参入した。
県警は、山口容疑者の働きかけで事業費用は数千万円増額され、受注側の利益も大幅に増大したとみている。元請けの建設業者は、山口容疑者を通じて事前に実施設計書の情報を入手したことで、市の見積額に迫る高い落札額で受注できた可能性があり、県警は事件への関与を調べる。【中里顕、浅野孝仁、大坪菜々美】
「行政への不信を招き、大変残念」林裕二市長会見
福岡県朝倉市の林裕二市長は14日、職員の逮捕を受けて記者会見し「行政への不信を招き、大変残念だ」と陳謝した。市によると、災害復旧工事の見積もりは被災状況が想定と異なる場合などに増額されるケースが多く、市の内部審査で事件となった工事の増額も問題視されなかったという。林市長は「私は内部審査にかかわっておらず、関与していない」と話した。
山口容疑者が勤務していた九州防水の社長は14日、取材に応じ、市職員の鎌田容疑者と面識はなく、会社の組織的関与も「ない」と否定した。社長によると、山口容疑者は朝倉と福岡の両地区の営業を担当していたが、今月上旬に突然辞表を提出した。「災害関連の工事はほとんど赤字でもうかっていない。(山口容疑者は)役員で年収も700万円ほどあり、金に困っている様子はなかった」などと語った。
元請け業者の社長は、両容疑者との面識を認めた上で「ショックだ。うちの会社は事件に全然関係ない」と強調した。別の被災家屋の撤去工事で解体業者が見つからず困っていた時に九州防水の支援を受けたことがあり、今回は恩返しとして下請けを依頼したという。【一宮俊介、宗岡敬介】