小売や外食などの労働組合が加盟する「UAゼンセン」には、新型コロナウイルス問題に関連して、組合員が受けたハラスメントの相談が多く寄せられています。 「従業員はマスクしていながら、客には売らないのか」 「レジ待ちが長すぎる。何とかしろ」 「感染したら店のせいにしてやる」 物流や医療業界からは、感染リスクを理由に差別的な扱いを受けたという報告も寄せられていました。 「子どもの登校を拒否され、自宅待機になった」 「配達時に消毒スプレーをかけられた」 こうした不当な物言いは、労働者を追い詰めます。現場の声から、ライフラインを支える現場に「危険な兆候」が表れていることが見えてきました。 ●相談内容にあった「心配になる言葉」 今回、UAゼンセンの許可を得て、消費者心理にくわしい関西大学の池内裕美教授に数十件ある相談内容を見てもらいました。 ここで池内教授が着目したのは「あきらめています」という、ある労働者の言葉でした。その相談にはこうつづられていました。 「ドラッグストアで働いている者です。多くの現場が疲弊しています。みんな声をあげることをあきらめています。現場の現状を届けてください。どうか助けてください。どうかお願いします」 ●精神疾患につながる恐れ 心理学には「学習性無力感」という言葉があります。有名なのはイヌを使った実験です。 電流が流れる部屋にイヌを入れ、逃げられないようにします。最初は避けようとしていたイヌも、やがて観念します。一度こうなると、電気ショックを回避する手段をもうけた部屋に入れても、ただ苦痛に耐えるようになるそうです。 「『捕虜の心理』や『監禁の心理』とも言われます。逃げられないと学習したら受け入れてしまう。その先にあるのが『うつ病』です。詳細な調査が必要ですが、多くの現場でこれに近いことが起きていた可能性があります」(池内教授) ●コロナ禍の特色、従業員に強いストレス こうした状況はどのようにできたと考えられるでしょうか。 客側は終わりの見えないコロナ問題に閉塞感や不安感などを募らせています。感情のコントロールが難しく、暴言など「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が起きやすい状況です。 労働者側も条件は一緒ですが、地域のライフラインを支えているというプライドもあります。しかし、本来なら感謝されていいはずなのに、不当なカスハラにさらされ、不満が溜まっていきます。 また、ただでさえ危険を感じているのに、緊急事態宣言が出ると、外出を自粛されている中、働かなくてはならないという恐怖感・不公平感が強くなっていきます。
小売や外食などの労働組合が加盟する「UAゼンセン」には、新型コロナウイルス問題に関連して、組合員が受けたハラスメントの相談が多く寄せられています。
「従業員はマスクしていながら、客には売らないのか」 「レジ待ちが長すぎる。何とかしろ」 「感染したら店のせいにしてやる」
物流や医療業界からは、感染リスクを理由に差別的な扱いを受けたという報告も寄せられていました。
「子どもの登校を拒否され、自宅待機になった」 「配達時に消毒スプレーをかけられた」
こうした不当な物言いは、労働者を追い詰めます。現場の声から、ライフラインを支える現場に「危険な兆候」が表れていることが見えてきました。
今回、UAゼンセンの許可を得て、消費者心理にくわしい関西大学の池内裕美教授に数十件ある相談内容を見てもらいました。
ここで池内教授が着目したのは「あきらめています」という、ある労働者の言葉でした。その相談にはこうつづられていました。
「ドラッグストアで働いている者です。多くの現場が疲弊しています。みんな声をあげることをあきらめています。現場の現状を届けてください。どうか助けてください。どうかお願いします」
心理学には「学習性無力感」という言葉があります。有名なのはイヌを使った実験です。
電流が流れる部屋にイヌを入れ、逃げられないようにします。最初は避けようとしていたイヌも、やがて観念します。一度こうなると、電気ショックを回避する手段をもうけた部屋に入れても、ただ苦痛に耐えるようになるそうです。
「『捕虜の心理』や『監禁の心理』とも言われます。逃げられないと学習したら受け入れてしまう。その先にあるのが『うつ病』です。詳細な調査が必要ですが、多くの現場でこれに近いことが起きていた可能性があります」(池内教授)
こうした状況はどのようにできたと考えられるでしょうか。
客側は終わりの見えないコロナ問題に閉塞感や不安感などを募らせています。感情のコントロールが難しく、暴言など「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が起きやすい状況です。
労働者側も条件は一緒ですが、地域のライフラインを支えているというプライドもあります。しかし、本来なら感謝されていいはずなのに、不当なカスハラにさらされ、不満が溜まっていきます。
また、ただでさえ危険を感じているのに、緊急事態宣言が出ると、外出を自粛されている中、働かなくてはならないという恐怖感・不公平感が強くなっていきます。