コロナ禍で変わる検視の手順 栃木県警、2次感染リスクに対策徹底

新型コロナウイルスの影響で、変死体の死因や事件性の有無を警察が判断する「検視」までの手順が変化している。変死体が生前に感染していた場合、臨場した警察官らに2次感染のリスクが伴うからだ。栃木県警ではコロナ禍以降、生前に感染の兆候がなかったかを周囲に確認、必要に応じて防疫体制を整えて変死体を扱うなど、感染リスク回避の徹底を始めた。県警幹部は「これまでは感染症対策のノウハウがなかった。今後の感染症流行に向けて、今回構築した方法を共有することが重要」と話している。(根本和哉)
■生前に発熱
3月下旬、県南に住む50代の男性の勤務先から「男性と連絡が取れない」と県警へ通報があった。安否確認のために男性の自宅に入る前、担当の警察官は知人など周囲に聞き取りを実施。その結果、3月中旬から発熱を理由に仕事を休んでいたことが判明したため、県警は新型コロナウイルス感染の疑いがあると判断した。
警察官が防護服を着用するなど事前に防疫体制を整えてから男性宅に入り変死体と接したため、県警は2次感染リスクを軽減しながら、変死体をPCR検査に回すことができた。変死体は陰性だった。
国内での感染拡大以降、全国の警察が取り扱った変死体から新型コロナウイルスが検出されるケースが出ている。県内で変死体の陽性例はまだないが、感染が疑われPCR検査を実施した例は、県南の男性のケースなど3月下旬以降数件あったという。
■過去には講じず
新型コロナウイルス以外にも、変死体からの2次感染リスクがある感染症はある。一方、SARS(重症急性呼吸器症候群)や鳥インフルエンザなど過去に世界的流行があった感染症が県内で蔓延(まんえん)した例はなく、県警はこれまで、変死体の対応にあたり特段の感染症対策を講じてこなかった。
しかし、新型コロナウイルスが急速に広まり県外で遺体が感染している例が報告されたことから対策が急務となった。警察庁や保健所から具体的な指示はなかったものの、県外の例を参考にしつつ、対策を取り始めた。
■接触前に
コロナ禍以前に県警が変死体を発見、または発見したとの通報を受けた場合、警察官が5~6人で現場に向かい検視や周辺の捜査を実施。その後、必要に応じて司法解剖に回していた。
コロナ禍以降は、現場へ足を踏み入れる前に、電話などで遺族や周囲に生前の発熱や肺炎など、感染が疑われる症状がなかったかや直近の行動を確認。それが終了して初めて変死体に接触している。
感染の可能性があると県警が判断した場合、防護服やマスク、ゴーグルを着用した警察官1人が医師とともに変死体から検体を採取しPCR検査に回す。検査結果が出るまでは変死体に誰も近づかないようにし、陰性ならそのまま検視を実施、陽性なら保健所の指示を仰いでその後の方針が決まるという。
県外では検査人員や設備不足などで、変死体のPCR検査が拒否される事例も確認されているが、県警が保健所に依頼した変死体のPCR検査はこれまですべて行われているという。「感染していたかどうか不明なままでは遺族が不安を抱えるため、幸いなこと」と、捜査関係者は胸をなでおろす。県内での新型コロナウイルスの流行は小康状態だが、県警は「警察業務の運営に支障が生じないよう、感染症対策を徹底していく」としている。