これまで世界中の危険地帯を旅して、そこで見た現実をジャーナリスト目線で紹介してきた本連載だが、現在のところコロナ禍の影響で、海外に行くことができない。そこで取材して稼働しているYou Tubeで現在放送している「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」という番組を軸にしたものを紹介していきたい。
タイトルからもわかるが取り扱っているのは裏社会、それも日本を舞台にしたものである。
現状を鑑みて、今後も海外のネタが扱いにくいところもあるため裏社会ジャーニーで取材を重ねている日本の裏社会ついて紹介してこうと思う。
番組は基礎知識を解説する座学と当事者(有識者)との対談(インタビュー)で構成している。現在は「西成」を取りあげている。
この場所は、私の感覚では、日本にありながらアジアのスラム街の雰囲気を感じられる数少ない場所だと思う。といっても大阪・西成区の釜ヶ崎という地区の一角だけのこと。ここは第二次大戦後、労働者目当ての宿屋が建てられ、大阪万博で全国から労働者が集まったことで現在の西成が形成されていった。その後、労働者の高齢化や仕事の現象などの問題に直面しているものの、ドラッグやヤクザ、ホームレスなどが混在した日本を代表する謎多き地域となっている。
初めて行ったのは高校時代。青春18切符を使って仙台から出発して旅しているときに、テレビ番組の衝撃映像的なやつで見た西成暴動の様子を不意に思い出して、行ってみることにしたのがきっかけだった。
最初に降り立った頃の記憶は、道路にシートを敷いてなにかよくわからないものを販売している様子だった。これが泥棒市であることを知ったのはだいぶあとのことだ。
それから何度か通ったが、いまでも興味は尽きない。現在の私のまわりには西成に精通した人たちも多く色々な話を聞くのだが、なかでも『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)を執筆した國友公司さんは、実際に西成の飯場で働き、タイトル通り西成で78日間暮らしたツワモノである。彼からは西成都市伝説を聞くことができた。
たとえば、日本では考えられないほど悪いとされる西成の治安の実態について質問したところ、「悪いことをしなければ」ということだった。悪いこととは何をさすのか。これはドラッグのことである。西成は西日本では有名な覚醒剤の取引現場という顔がある。そういう方面に踏み込むと、ある意味で一線を越えていくことになるということなのだろう。
ほかにも警察の職務質問がすごいという噂、闇市が存在するのか、ドヤの実態、激安弁当の中身など、いずれも興味の尽きないトピックを國友さんは自身の体験を交えて詳細に語ってくれた。
おかげで西成に対する妙な偏見が助長されることもなく、むしろ理解を深めて立体的に見ることができるようになった。それと同時に西成の成立に深く関わるドヤ(宿)と労働者、高齢化、福祉と生活保護など日本社会が抱える問題の縮図も見て取ることができて、非常に興味深いものとなった。
西成に興味を持った人は、ぜひとも「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」も視聴してもらいたい。
■丸山ゴンザレス(まるやま・ごんざれす) 自称「考古学者崩れ」のジャーナリスト。海外の危険地帯から裏社会まで体当たり取材を繰り返す。『世界の危険思想 悪い奴らの頭の中』(光文社新書)『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』(講談社)など著書多数。