アニメ制作会社の「未払い残業代」、突然の振り込みで「裁判終了」へ…原告男性、裁量労働制めぐる判決とれず「複雑な気持ち」

劇場アニメ『海獣の子供』など、クオリティの高い作品で知られるアニメ制作会社「STUDIO4℃」(スタジオよんどしい・東京都武蔵野市)の男性社員(26)が、未払い残業代の支払いをもとめていた訴訟がこのほど、事実上の終了となった。会社側が6月上旬、男性の銀行口座に未払い残業代286万7375円全額と遅延損害金を振り込んだからだ。 ●未払い残業の支払いをもとめて提訴していた 男性は2016年4月、正社員として採用されて、2019年5月まで『海獣の子供』(2019年6月公開)のスケジュールやスタッフ、作画を管理する「制作進行」を担当。月最大103時間(2019年3月)の時間外労働があったが、残業代が支払われていなかったという。 三鷹労働基準監督署が2019年6月、時間外の割増賃金(残業代)の未払いについて、会社に是正勧告をおこなったが、会社側が支払いを拒否したことから、男性は2019年10月、未払い残業代などの支払いをもとめて東京地裁に提訴した。 ●突然、裁判が終了に向かうことに 主な争点は、専門業務型の裁量労働制(みなし労働時間)が適用されていたかどうか。 男性側は、(1)アニメの制作進行は、専門業務型の裁量労働制に該当しない、(2)仮に該当するとしても、法律にもとづく手続きがされていなかった、(3)いずれにせよ、実際には、裁量のある働き方でなかった――と主張していた。 男性側の代理人によると、会社側から、第2回口頭弁論(2020年1月30日)で、反論とともに和解の申し出があったが、その後の弁論準備期日で「和解はむずかしい」となり、判決に向けて裁判をすすめることになっていた。 ところが、会社側は6月8日、一切の事前連絡なく、突然、男性の銀行口座に残業代286万7375円全額と遅延損害金を振り込んだという。 これで請求の原因がなくなり、裁量労働制の違法性を判断する判決を事実上とれなくなったため、男性側は「裁判の取り下げ」をもとめたが、会社側が棄却判決をもとめて同意しなかった。男性側は「請求の放棄」によって、裁判を終わらせる予定だ。 ●男性「非常に複雑な気持ちだ」 男性が加入していた労働組合「総合サポートユニオン」によると、2019年11月には、三鷹労働基準監督署が、男性に対する裁量労働制の適用を否定する判断を追加でおこなっていたという。 男性は6月23日、東京・霞が関の厚労省クラブで会見を開いて「完全勝訴といっていいが、裁量労働制の判決をとることを旗印にしていた。非常に複雑な気持ちだ。自分の裁判は終わったが、アニメ業界の問題は何一つ改善されていない」と話した。 ●会社側「これ以上の交渉が難しいと判断した」
劇場アニメ『海獣の子供』など、クオリティの高い作品で知られるアニメ制作会社「STUDIO4℃」(スタジオよんどしい・東京都武蔵野市)の男性社員(26)が、未払い残業代の支払いをもとめていた訴訟がこのほど、事実上の終了となった。会社側が6月上旬、男性の銀行口座に未払い残業代286万7375円全額と遅延損害金を振り込んだからだ。
男性は2016年4月、正社員として採用されて、2019年5月まで『海獣の子供』(2019年6月公開)のスケジュールやスタッフ、作画を管理する「制作進行」を担当。月最大103時間(2019年3月)の時間外労働があったが、残業代が支払われていなかったという。
三鷹労働基準監督署が2019年6月、時間外の割増賃金(残業代)の未払いについて、会社に是正勧告をおこなったが、会社側が支払いを拒否したことから、男性は2019年10月、未払い残業代などの支払いをもとめて東京地裁に提訴した。
主な争点は、専門業務型の裁量労働制(みなし労働時間)が適用されていたかどうか。
男性側は、(1)アニメの制作進行は、専門業務型の裁量労働制に該当しない、(2)仮に該当するとしても、法律にもとづく手続きがされていなかった、(3)いずれにせよ、実際には、裁量のある働き方でなかった――と主張していた。
男性側の代理人によると、会社側から、第2回口頭弁論(2020年1月30日)で、反論とともに和解の申し出があったが、その後の弁論準備期日で「和解はむずかしい」となり、判決に向けて裁判をすすめることになっていた。
ところが、会社側は6月8日、一切の事前連絡なく、突然、男性の銀行口座に残業代286万7375円全額と遅延損害金を振り込んだという。
これで請求の原因がなくなり、裁量労働制の違法性を判断する判決を事実上とれなくなったため、男性側は「裁判の取り下げ」をもとめたが、会社側が棄却判決をもとめて同意しなかった。男性側は「請求の放棄」によって、裁判を終わらせる予定だ。

男性が加入していた労働組合「総合サポートユニオン」によると、2019年11月には、三鷹労働基準監督署が、男性に対する裁量労働制の適用を否定する判断を追加でおこなっていたという。
男性は6月23日、東京・霞が関の厚労省クラブで会見を開いて「完全勝訴といっていいが、裁量労働制の判決をとることを旗印にしていた。非常に複雑な気持ちだ。自分の裁判は終わったが、アニメ業界の問題は何一つ改善されていない」と話した。