京大、霊長類研の松沢元所長ら4人を懲戒処分へ 不正支出34件、5億円

京都大は霊長類研究所(愛知県犬山市)の設備工事を巡る国からの研究費の不正支出疑惑で26日、同研究所元所長の松沢哲郎・高等研究院特別教授(69)ら4人による不正な支出が2011~14年度に34件・計5億669万円あったと発表した。私的流用はなかったとしている。4人を懲戒処分とする方針で、記者会見した潮見佳男副学長(法務・コンプライアンス担当)は「事態を重く受け止め、全学を挙げて再発防止に取り組む」と謝罪した。
財源は大半が国の補助金・交付金で、文部科学省は不正支出分の返還を求める方針。3045万円は寄付金だった。
松沢氏はチンパンジーの知性を探る霊長類研究の第一人者で06~12年度に同研究所所長を務めた。他の3人は同研究所の友永雅己教授(56)=当時准教授▽平田聡・京大野生動物研究センター教授(47)=当時同研究所特定准教授▽森村成樹・同センター特定准教授(49)=当時同研究所特定助教。
発表によると、不正支出の内訳は、過大な支出12件(計1498万円)▽架空取引14件(計4880万円)▽目的外使用1件(47万円)▽入札妨害7件(計4億4242万円)。いずれも犬山市の同研究所と、熊本県宇城市の同センターのチンパンジー用ケージの整備に関係していた。
過大な支出は、仕様書との乖離(かいり)で損害が生じた契約が9件、損失補(ほてん)のため不当に金額を上乗せした契約が3件。架空取引は、納品実態がないのに代金を支払った契約1件▽別の契約で発注済みなのに再発注し、二重に代金を支払った契約11件▽正式な手続きを経ず納品された物品に対し、翌年度以降に架空の発注手続きをして代金を支払った契約2件――だった。
目的外使用は、補助金による購入品を別用途で使ったり、全く使用せず保管したりしていた。入札妨害はいずれも仕様の策定に関与した取引先業者を入札に参加させていた。
関係者によると、松沢氏らはケージ設置の際に余った補助金を別ケージの設置費に充てようと、付き合いのある業者に落札させるなどしていたが、最初のケージで業者に赤字が出て、補のため架空発注を繰り返すなどしたという。識者は「ベテラン研究者による昔ながらの手法」と指摘している。
調査では背景として▽チンパンジーの飼育・実験という分野の特殊性と、飼育施設を扱う特定の業者との間の長期の密接な関係▽研究優先で順法意識の欠如や会計制度の軽視▽教員に対し事務職員が強く意見を言えない状況――があったとした。
松沢氏が14件、友永氏が26件、平田氏が1件、森村氏が3件に関与したと認定。京大によると、不正支出を認めて反省する人もいるが、関与を否定する人もおり、今後も調査を続けて処分内容を決める。【福富智、菅沼舞】
文科省、調査後に返還請求の方針
文部科学省によると、国からの研究費の不正支出が確認された場合、私的流用の有無に関係なく返還を求めている。文科省として不正支出の金額を改めて調査したうえで、寄付金を除いた分について京都大に返還請求する方針。約5億円になる見通しだが、金額の確定には数カ月かかる可能性があるという。【池田知広】
京都大霊長類研究所
「ヒトとは何か」という課題を総合的に研究する国内唯一の霊長類の研究所。1967年6月に全国の研究者の共同利用施設として設立された。2019年度年報によると、12種約1200個体の霊長類を飼育。進化形態や思考言語、認知学習など10分野を研究し、付属の研究センターも二つある。教員は43人、研究員や大学院生、技術職員も含めると202人が在籍し、山極寿一学長も88年から10年間、助手として勤務した。