◆元社員の男性らが「アート引越センター」を提訴
「アート引越センター」を経営する株式会社アートコーポレーション。同社は、残業代の計算がずさんだっただけでなく、「引っ越し事故賠償金」(以下、賠償金)を従業員の給与から天引きしていた。
横浜都筑支店に勤務していた元社員の男性2人と元アルバイトの男性1人は、2017年10月10日、未払い残業代の支払いや賠償金の返還を求めて同社を提訴。6月25日に横浜地裁で判決の言い渡しがあった。
◆未払いの残業代は概ね請求が認められる
残業代を巡っては、“始業時刻”が争点の一つになった。会社側は7時半が始業時刻だと主張していたが、原告らは着替えやラジオ体操、朝礼の必要があったことから、始業時刻はもっと早かったと主張。
判決では、原告らの主張が一部認められ、実際の始業時刻は7時10分だったとされた。そのため改めて労働時間として認められた分が原告らに支払われることとなった。
だが、そもそも同社は、残業時間の管理が非常にずさんだったという。原告らが退社後に相談した日本労働評議会は、提訴前の2017年7月1日にこう記している。
「組合員達はアート引越センターに勤務していた頃、長時間働いた割には残業代が少ないことを感じていました。アートではタイムカードではなく、電子式の出退勤の打刻をして、会社が集中管理しています。会社は組合員らの労働時間を操作したことを認めました。残業時間が多くならないように、主に退社時間を操作し、残業時間を削っていたのです」
◆不当な引っ越し事故賠償金、全額返還を命じる
「引っ越し事故賠償金」は、引っ越し中の物損事故1件につき3万円を上限に従業員に負担を求めるものだ。元従業員だったという人物が2017年10月、「賠償金」が嵩んで給与がマイナスになってしまったとツイートし、大きな話題になっていた。
原告らが勤務していた横浜都筑支店では、賠償金の名目で1日当たり500円徴収していた。横浜地裁は、この賠償金を全額返還するよう同社に命じた。
原告のひとりである佐藤美悠人さん(27)は判決を受けて、「働いていた当時は、この制度のことを当たり前だと思っていました。労働組合に加入してから初めて不当なことだと知りました。今回、全額返還されることになったのは当然だと思います」と話した。
なおこの制度自体は2017年12月に廃止されている。
他にも判決では、アルバイトだった原告のひとりに対し、当時支給されていなかった通勤手当に相当する分を支払うよう命じた。
◆組合の実態がない「偽装組合」
原告らの主張が概ね認められた今回の判決であったが、代理人の指宿昭一弁護士は「偽装組合」に関して裁判所の判断に不満があるという。
「偽装組合」とは何か。指宿弁護士によると、「アートコーポレーション労働組合」は、組合大会も開かず、組合役員選挙も実施せず、組合活動らしきものは全くしていないという。
にもかかわらず、原告らは労働組合費を毎月1000円も給与から天引きされていた。この組合費の返還も求めたが、請求は退けられてしまった。
指宿弁護士は、「労働組合に値しない『偽装組合』の組合費の徴収を認めた、不当な判断だと思います」と話した。
<取材・文/HBO編集部>