熊本、鹿児島両県の一部に大雨特別警報が出た4日、熊本県では球磨川が氾濫し、濁流が周囲の住宅をのみ込んだ。「ザーッ」と鳴り響く土砂崩れの音。「死を覚悟した」「景色が一変した」。辛うじて逃げ延びた被災者は「こんなことになるなんて」と声を震わせた。
芦北町女島の70代女性は、午前5時ごろ「ザーッ」という大きな音を聞いた。裏手が山だった近所の家が土砂崩れに巻き込まれたといい、「家がつぶれ、娘は助けられたが、高齢夫婦の救助中だ」と心配そうに話した。
土砂崩れは津奈木町でも。山肌が頂上付近から崩れ、住宅をのみ込んだ。現場を見た女性会社員(30)は「見慣れた景色が一変していた」と言葉を失った。巻き込まれた住宅には高齢夫婦と息子が住んでいるといい、「心配りができる優しい一家。こんなことになるなんて」と安否を気遣った。
広範囲に浸水被害が広がった人吉市では、温泉旅館の50代のおかみが、家屋2階まで水が迫った屋根の上で救助を待った。電話取材に「ここまで雨がひどくなるとは思わなかった」と切迫した様子で語った。
美容室を営む同市の女性(61)は4日未明、球磨村に暮らす友人からの電話で川の氾濫を知った。スマートフォンで撮影し、送ってくれた写真には、同村で経営する店が屋根近くまで水没し、近隣の住宅も水に漬かった様子が映っていた。「湖みたいだった。こんなの初めてです」と驚き、「朝まで雨と雷がひどく、一睡もできなかった」と振り返った。
「死を覚悟した」と話すのは同市でタイヤショップを営む松木翔平さん(31)。避難しようとした矢先の午前7時ごろ、自宅浸水が始まった。2階に逃げたが水位は上昇。「水が迫ってきた時は、なるようにしかならないと思った」と振り返った。
[時事通信社]