九州豪雨 孤立集落から次々救出、抱き合い歓喜「言葉にならない」 徒歩で会いに来た孫に涙

濁流が再び街を襲った。九州北部は7日から8日にかけても局地的に激しい雨が降り、行方不明者も出るなど各地で浸水被害や土砂災害が相次いだ。一方、少なくとも7市町村48集落で孤立状態が続く熊本県南部の被災地では久しぶりの晴れ間が広がり、再会を果たした家族らが涙を流した。
水は山からくみ、懐中電灯で夜を過ごす
町内20集落が孤立している熊本県芦北町では、8日早朝から自衛隊のヘリが町民総合センターのグラウンドと孤立集落を行き来して住民を移送した。孤立集落の多くでは電気も水道も途絶え、携帯電話も通じにくい。安否さえ分からず心配し通しだった家族らはヘリから降りてくる住民らと抱き合って喜んだ。
同町吉尾から救助された本村幸子さん(83)はめいの宮川京子さん(63)らと再会し「うれしい」と涙を見せた。本村さんは球磨川支流近くの自宅が2階近くまで水につかり、近くの友人夫婦宅に身を寄せていた。夜は懐中電灯をともし、水は山からくんできた。携帯電話のバッテリーは残りわずかになっていた。
町役場に薬とバッテリーを託し「早く助けてほしい」と頼み込んでいた宮川さん。本村さんを前に「何と言えばいいか。言葉にならない」と声を詰まらせた。
「あと少し頑張って」手紙出した娘、両親と再会
同じ吉尾地区の馬場崎静雄さん(77)と妻チエ子さん(74)もヘリで助け出された。静雄さんは脳出血の後遺症で左半身がまひし、介助するチエ子さんも脳梗塞(こうそく)になったことがある。
長女の看護師、小形(こがた)道代さん(48)=同県水俣市=は近所の人から「小学校に避難した。命は大丈夫」と電話を受けた4日早朝以降、連絡が取れなくなっていた。「2人とも体は大丈夫ですか。気をしっかりもって、あと少し頑張ってください」。そうしたためた手紙を町役場に託して無事を願っていただけに、職場の病院で再会し「ほっとした」と声を弾ませた。
一方、同町白石の鎌畑明さん(66)方には、娘の舟戸ちはるさんと孫の南星(みそら)さん(12)、絆星(ゆずき)さん(9)=いずれも同県人吉市=が土砂に埋まった道を約2キロ歩いてたどり着いた。鎌畑さんは4日未明に自宅が水につかり、妻と高台に避難。備蓄していた水と非常食でしのいでいる。「会いに来てくれるとは思わなかった」と鎌畑さん。舟戸さんは「無事を確認できてよかった」と涙をこぼした。
孤立集落には自衛隊が徒歩などで物資を運んでおり、県によると、8日までに球磨村など全ての集落に到達した。県は土砂の堆積(たいせき)などで不通になっている道路の復旧工事を24時間態勢で進めているが、一部は開通の見通しが立っていない。【林田奈々、高橋広之】