相次いだ避難所の浸水 安全性担保の難しさ

豪雨に見舞われた九州では、各地で浸水のために開設できなかったり、閉鎖に追い込まれたりした避難所が相次いだ。自治体は水防法に基づく「浸水想定区域」を参考にしながら、より安全な場所での避難所の確保を目指しているが、中には地域全体が浸水の危険性が高い区域内にある場所もある。今回の豪雨では、安全を担保することの難しさも浮かび上がった。(小松大騎、石川有紀、江森梓)
「あのときは行く当てがなくなり、焦った」
球磨(くま)川の氾濫で甚大な被害を受けた熊本県球磨村の渡地区の男性(62)は発災時を振り返る。
川の水位が上がり始めた4日早朝、男性は地区の指定避難所となっていた集会施設に向かうと、1階部分が水没していた。施設は入所者14人が亡くなった特別養護老人ホーム「千寿園」の近く。道路は冠水し、施設内に避難もできない。一息つけたのは、近くの高台にある公園に到着したときだった。公園には、のちに臨時避難所が開設された。
福岡県大牟田(おおむた)市では、避難所として開設していた市立みなと小学校と三川地区公民館が浸水のため閉鎖に追い込まれた。
災害時に住民が身を寄せる避難所の安全性担保は喫緊の課題だ。多発する水害を受け、国や自治体は平成13年、降雨の際に浸水の恐れがある「浸水想定区域」を指定。避難所は区域外に確保することが望ましいが、現実は厳しい。
急峻(きゅうしゅん)な山間地にある熊本県八代(やつしろ)市坂本町では、水害時の指定避難所全4カ所が区域内にあり、今回は全てが浸水と道路寸断で開設できなかった。地区のほとんどが区域内にかかる上、高齢者も多いため長距離の移動は難しく、区域外の施設を確保することは困難だった。結局、警察などのヘリが高台に避難した住民を救出、市中心部の避難所へ運んだ。
こうした事態は、九州豪雨に限った問題ではない。昨年の台風19号では、宮城県丸森町で区域内にあった避難所が浸水した。
京都大防災研究所の矢守克也教授は「地形的な要因もあり、土砂災害や洪水など、すべての危険を考慮した完璧な避難所を用意することは難しい」と指摘。その上で「住民は日ごろから避難所の選択肢を複数持つ必要がある。自治体も避難所自体に危険が迫ったときに屋上へ逃げられるような通路を確保するなど想定すべきだ」と話している。
避難所見直しの動きも
平成30年7月の西日本豪雨の被災地では、被災経験を基に避難場所のあり方を見直す取り組みが進む。
河川の決壊による洪水などで59人が犠牲になった岡山県倉敷市では、31年4月以降、浸水想定区域内にある公共施設計59カ所の上層階を「浸水時緊急避難場所」に指定。危機が迫り、区域外の避難所への避難が間に合わない場合の一時的な避難場所としている。
低地が多い同市では、指定避難所の多くが浸水想定区域内にある。西日本豪雨で被害が大きかった同市真備(まび)町では、浸水時の避難所3カ所に収容可能人数を超える数千人が避難。近くに避難所がなかった住民もいたことから、市の担当者は「すぐに区域外へ避難することは困難な場合もある。選択肢を少しでも増やしてほしい」と話す。
豪雨災害では、土砂災害への備えも重要だ。全国では土砂災害警戒区域内に指定避難所がある地域もある。西日本豪雨で大規模な土砂崩れが起きた広島県熊野町では、指定避難所13カ所のうち同区域にあった4カ所について、風水害時の指定を解除。避難先として町内3カ所の公民館を地域防災センターとして新築・改築を進めている。