21、22の両日に滋賀県草津市の烏丸半島で開かれる「イナズマロックフェス」。誰でも楽しめる広大な無料エリアは、企画する県出身のアーティスト、西川貴教さん(48)が掲げる地域振興の理念を具現化したものだ。収益の一部などを琵琶湖の環境保全として、県や草津市に寄付する取り組みも2009年から続き、県への寄付総額は約2650万円に上る。「地元を離れ、改めて自分にとって大切なものや大切な場所は何なのかを、イナズマを通じて実感できた」。11年目を迎えた今年のイナズマ開幕を前に、西川さんは毎日新聞の単独インタビューでこう語った。【聞き手・成松秋穂】
――2008年の「滋賀ふるさと観光大使」就任以降、地元・滋賀で西川さんの存在感がますます高まっています。古里への思いを教えてください。
◆地元を離れて、改めて自分にとって大切なものや大切な場所は何なのかを、イナズマを通じて実感することができました。単に場所があるだけではなくて、そこに「家族」がいてくれるということだと思うんです。
(イナズマロックフェスが始まった09年から)この10年で、イベントに関わる自治体の皆さんや関係者の皆さんが、自分にとってそういう「家族」のような存在にどんどんなってきていて。自分のそういう思いが強くなるのと同じくらい、地元の皆さんも僕のことを近くに感じてくださるようになってきている。これを味わっちゃったら「地元だから」というのを度外視して「そういう皆さんがいらっしゃる場所だから」こそ、いろいろな人にこの良さを伝えたい、という気持ちに変わっていきました。
――15年からはイナズマへの出店をかけた「イナズマフードGP(グランプリ)」が始まるなど「イナズマ」を冠したイベントが広がりを見せつつあります。7月には中断が検討された「彦根大花火大会」を巡り、滋賀県彦根市の大久保貴市長と、イナズマとの連携も含め対談されました。
◆彦根大花火大会はありがたいことに、大久保市長からのラブコールもあり、僕ができることをさせていただければと、すごく前向きにお話をさせていただきました。そういったことも見据えて、来年以降のことを考えていければな、と思っています。
同じように他の自治体の皆さんにも、イナズマは「滋賀でこんなイベントやっているんだ」と知っている方も以前よりも随分増えたので、もっと便利に僕らを使っていただければなと思うんです。例えば「もう一盛り上がりさせたいけれども、どうしたらいいのか」という時に、僕らが大切にしているイナズマのフィロソフィー(哲学)みたいなものを共有できるイベントであれば「イナズマロックフェスpresents」みたいなサポートの仕方とかもできるのではと思います。
新しいイベントはもちろん、既存のイベントとも交流することで、より活性化させることを真剣に考えたいと思っています。面倒なことや、分からないこともあるかもしれませんが、一緒に考えていければなと思います。
――連携をするとなると、現実問題としてさまざまな課題もありそうです。
◆僕らも10年間、手作りのところからやってきたので、補助金や助成金を受けているわけでは一切ないんです。自分たちで精算して収支を透明にし、皆さんに開示しながら、寄付も含め、関係各位にきちんと丁寧にやらせていただいているだけなので、それと同じことをやっていくだけです。
一般的に「こういうのは無理ですよね」と最初から諦めてしまわれていることがよくあります。例えば「ゲストを呼びたい」というオファーも、窓口を我々と一つにすることでゲストに来てもらえる日を増やすことができるので、出演の可能性も増えてくると思います。そういう意味で、地元の皆さんの便利屋さんみたいな感じで捉えてもらえればな、と思っています。
――滋賀が舞台のNHK連続テレビ小説「スカーレット」に出演されるなど、県など地元自治体も西川さんに期待を寄せています。
◆今回、期せずして(滋賀が)ドラマの舞台になり、僕も出演させていただくことになりました。これを機に滋賀の魅力に触れていただければと、撮影現場に県の観光振興局の方がいらして、出演者の皆さんに地元の特産品を振る舞ってくださったりしています。僕との情報共有を必ずされるので、僕が動く先で滋賀をPRできるタイミングがあればこちらから投げかけますし、逆に観光振興局の方からも提案をいただくという形が、ずっと取れているということなのだと思います。そういう意味でも、この10年間がいかに我々にとって充実して、かつ自治体の皆さんときちんと向き合えてきたことの証拠かな、と思っています。
三日月知事もフェスに期待
滋賀県の三日月大造知事は17日の記者会見で、今年で11回目の「イナズマロックフェス」について「ある意味、哲学や志のにじみ出る、とてもありがたいイベント。心から敬意を表し、感謝している」と述べた。三日月知事は恒例の「開会宣言」をするため、2日目の22日にメインステージ「雷神」に登場する予定。
三日月知事は「滋賀ふるさと観光大使」を務める西川貴教さんについて「ふるさと滋賀への熱い思いや、琵琶湖への強い使命感を持っている」と評価。今後については「私が申し上げることではないかもしれないが『らしい形』で続き、広がっていったら」と期待感を示した。【成松秋穂】