交通事故で後遺障害が残ったため得られなくなった収入(逸失利益)につき、毎月分割払いで受け取る「定期金賠償」が認められるかが争われた裁判で、最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は7月9日、「損害賠償制度の目的および理念に照らし相当と認められるときは、特段の事情がない限り、定期金賠償の対象となる」との初判断を示した。 その上で、原告が求める定期金賠償を認めた二審判決を維持し、上告を棄却した。 後遺障害による逸失利益の賠償方法は法律に明記されているわけではなく、実務上、一括で支払う「一時金賠償」が一般的とされていたため、最高裁の判断が注目されていた。 事故は、原告の男性(17)が北海道の市道を横断している際に発生(当時4歳)。大型トラックと衝突し、高次脳機能障害と診断された。事故に遭わなければ得られるはずの将来の収入分を、一括ではなく毎月一定額支払うよう、運転手や保険会社などに求めて、2015年に提訴していた。 今回の判決は今後の実務にどのような影響を与えるのか。交通事故の賠償に詳しい西村裕一弁護士に解説してもらった。 ●一括か分割か、選択次第で受け取る金額が大きく変わる可能性も もともと交通事故をはじめ、民法の不法行為による損害賠償については、定期金賠償に関する明確な定めはなく、一括で支払いを行う一時金賠償が通常です。 しかしながら、一時金賠償を選択した場合、本来であれば将来的に現実化する損害額を前もって受け取るという形になるため、その点を考慮しなければなりません。この考え方が「中間利息の控除」です。 つまり、今受け取る100円と将来受け取る100円は、同じ100円でも価値が違うのです。 この中間利息を控除する方法として、「ライプニッツ係数」というものを用いています。そして、2020年3月までは民法の法定利率である年5%の利息控除となっていました。たとえば、30年間のライプニッツ係数は15.3725です。 後遺障害逸失利益の計算方法は、一時金賠償の場合、「基礎年収×労働能力喪失率×ライプニッツ係数」となるため、年収500万円で100%の喪失率(今回の裁判で認定された喪失率)が30年間継続するケースで考えると、「500万円×100%×15.3725=7686万2500円」となります。 定期金賠償を選択した場合、中間利息控除はありませんので、30年後の総受取額は、500万円×100%×30年=1億5000万円となります。
交通事故で後遺障害が残ったため得られなくなった収入(逸失利益)につき、毎月分割払いで受け取る「定期金賠償」が認められるかが争われた裁判で、最高裁第一小法廷(小池裕裁判長)は7月9日、「損害賠償制度の目的および理念に照らし相当と認められるときは、特段の事情がない限り、定期金賠償の対象となる」との初判断を示した。
その上で、原告が求める定期金賠償を認めた二審判決を維持し、上告を棄却した。
後遺障害による逸失利益の賠償方法は法律に明記されているわけではなく、実務上、一括で支払う「一時金賠償」が一般的とされていたため、最高裁の判断が注目されていた。
事故は、原告の男性(17)が北海道の市道を横断している際に発生(当時4歳)。大型トラックと衝突し、高次脳機能障害と診断された。事故に遭わなければ得られるはずの将来の収入分を、一括ではなく毎月一定額支払うよう、運転手や保険会社などに求めて、2015年に提訴していた。
今回の判決は今後の実務にどのような影響を与えるのか。交通事故の賠償に詳しい西村裕一弁護士に解説してもらった。
もともと交通事故をはじめ、民法の不法行為による損害賠償については、定期金賠償に関する明確な定めはなく、一括で支払いを行う一時金賠償が通常です。
しかしながら、一時金賠償を選択した場合、本来であれば将来的に現実化する損害額を前もって受け取るという形になるため、その点を考慮しなければなりません。この考え方が「中間利息の控除」です。
つまり、今受け取る100円と将来受け取る100円は、同じ100円でも価値が違うのです。
この中間利息を控除する方法として、「ライプニッツ係数」というものを用いています。そして、2020年3月までは民法の法定利率である年5%の利息控除となっていました。たとえば、30年間のライプニッツ係数は15.3725です。
後遺障害逸失利益の計算方法は、一時金賠償の場合、「基礎年収×労働能力喪失率×ライプニッツ係数」となるため、年収500万円で100%の喪失率(今回の裁判で認定された喪失率)が30年間継続するケースで考えると、「500万円×100%×15.3725=7686万2500円」となります。
定期金賠償を選択した場合、中間利息控除はありませんので、30年後の総受取額は、500万円×100%×30年=1億5000万円となります。