九州を襲った記録的豪雨の犠牲者で、熊本、福岡、大分3県で身元が発表された57人のうち、少なくとも4分の3にあたる43人が氾濫した川沿いの地区に住んでいたことが、毎日新聞のまとめで判明した。43人のうち約9割の38人が65歳以上の高齢者だった。3日夜から4日朝にかけた豪雨の中で多くの人が逃げ遅れた可能性があり、高齢者避難の課題が改めて浮かんだ。
熊本県では、2012年7月12日未明から阿蘇地方などで1時間100ミリ超の記録的な雨が降り、県内で23人が死亡した。この反省から県は、明るいうちに避難を呼びかける「予防的避難」を目標に掲げ、市町村が避難所を開設する経費の一部を負担するモデル事業を実施したこともある。
しかし今回、気象庁の予想雨量は県内の多いところで24時間200ミリで、モデル事業で予防的避難をする基準としていた値(24時間雨量250ミリ以上など)にも満たなかった。実際は400ミリ以上の雨となり、人吉市では「避難準備・高齢者等避難開始」の情報を出せないまま、最初の避難勧告が3日午後11時となるなど住民の明るいうちの避難は難しい状況だった。県の防災担当者は「答えの見えない重い宿題だ」と語る。
静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は「夜になれば大雨の中で高齢者は動けない。一方で、雨量予測が難しい中では行政の対応に限界もある。行政に頼りすぎず、住民自ら早めに避難することが世の中の常識にならなければ被害は減らせない」と訴える。【平川昌範】