東京・足立区の荒川河川敷で6月3日に捕獲された野生のシカ(オス)が、同8日に千葉・市原市の動物園「市原ぞうの国」に引き取られて殺処分を免れてから、約1か月半がたつ。エスケープ(逃げる)したことから「ケープ」と名付けられ、大切に飼育されている。検疫で病気は見つからず、現在は徐々に人間になれている段階。一般公開は秋以降になる見込みだという。
ケープくんは今、市原ぞうの国の近所にある姉妹園で、ニホンジカなど約30種類の動物が暮らす「サユリワールド」の敷地内にいる。広報の佐々木麻衣さんは、「多くのお問い合わせがありますが、一般公開は秋かな、来年かな、という感じです。現状は、知らない人が来ると逃げてしまうので」と、見通しを語った。
他の動物たちがいる公開エリアから、約100メートル離れたところにケープくん専用の“家”がある。木造の小屋と、網が張られた屋外スペースからなり、取材した日は雨だったが、外で元気よく体を動かしていた。しかし、知らない人間が近づくと、ササッと小屋へ入ってしまった。好物のニンジンやスイカなどエサを置くと、スタッフの菅野あすかさんら心を許す人が見ている前では食べるようになったが、佐々木さんは「スタッフの手から直接食べられるようになるかが(一般公開への)ひとつの目安」と話す。
ただ、“シカ界”では早くも人気者の予感だ。園のシカはほかにメス13頭、オス1頭。メスたちがケープくんの小屋に最も近いフェンスに集まり、熱視線を送っているように見えるという。メスは4~5歳で体高1メートル弱、ケープくんは推定3歳のニホンジカで体高約1・3メートル。佐々木さんは「ケープくんにとってはお姉さんたち。『東京から来たんだよ』と教えています(笑い)。顔は見えなくても、においを感じるのかも。ケープくんは体が大きくて、顔もきれい」と説明する。人間で言えば「都会から来た高身長のイケメン転校生」だろうか。野生でワイルドな一方、人に対して“シャイ”なところが、メスジカの母性本能をくすぐるのかもしれない。
今後は9月にも、公開エリアにケープくん用の高さのフェンスなどを設けたスペースをつくり、そこにメスジカを何頭かずつ入れて相性を確かめる“お見合い”を行う予定。ケープくんの名付け親の坂本小百合園長は、「(引き取ったのは)集客目的ではなく『かわいそうに』という気持ちからですが、皆さんに『ケープくん』と言って(注目して)もらえるのは、あの子にスター性があるのだと思う」と話していた。(竹内 竜也)
◆ケープくん捕獲、移送までの経緯
▼5月31日 東京・板橋区内で目撃される
▼6月2日 足立区の荒川河川敷の鹿浜橋付近に出没。ドローンなどを使って捕獲を試みるも、逃げられる
▼同3日 足立区の荒川河川敷の堀切橋付近で目撃される。警察官ら30人以上で網を使って捕獲。同区内の施設に一時保護される
▼同4~5日 足立区に主にシカの殺処分回避を求める電話やメールが殺到。5日に同区から相談を受けた市原ぞうの国が引き取ることを決断
▼同8日 市原ぞうの国(サユリワールド)に移送。「ケープ」と名付けられる