再選の5日後に粛清人事…小池都知事は“怖い人”を敵に回した

【経済ニュース深読み】

東京都が監督する東京都環境公社の理事長が今月31日、退任する。同13日に再選されたばかりだった。わずか18日でのクビの異常さは、都知事選で大勝した小池百合子都知事の“威光”が、隅々にまで及ぶことを意味する。

退任するのは、中央卸売市場次長として築地市場の豊洲移転を見届け、小池氏のしたたかな市場利用を軽妙かつ辛辣な筆致で「築地と豊洲」(都政新報社)に書き残した澤章氏である。昨年、都庁を退職して、都の外郭団体である環境公社の理事長に就いていた。

1986年、都庁に入り、鈴木俊一、青島幸男、石原慎太郎、猪瀬直樹、舛添要一、小池百合子と歴代知事に仕え、「主」に合わせる都官僚の遊泳術と触れてはならないタブーは知り尽くしている。告発書を出した段階で、粛清人事を繰り返してきた小池氏の報復は予想できた。だが、いかにも早い。

退任を告げたのは、多羅尾光睦副知事だ。都庁の自室に呼びつけ、「公務員として、都庁を辞めて、すぐに(『築地と豊洲』で)内部情報を明らかにするのは常識外れ」を理由に、7月末のクビを告げた。都知事選の5日後だった。その時は頭に血が上ったものの、澤氏は今、むしろすがすがしいという。

「局長経験者の常識、といったつまらないことを気にしなくて済みます。都政内部の動きは国政以上に見えにくい。外から眺めるのと内から体感するのではまるで違います。コロナ禍で小池知事の動静に注目が集まるなか、その違いをしっかりと伝えたい」

「築地と豊洲」は、残されるべきノンフィクションである。2016年8月、初入庁した小池氏が、最初に宣言したのは「市場移転の見直し」だった。それが、小池氏が主張するように、反対派や都民の「安全安心」の不安を解消するためなら、結果的に2年遅れたことも納得できる。しかし、澤氏が時系列で克明に明かすのは、見直し作業を通じて都議会自民党など反小池派に打撃を与え、都政を完全に牛耳ろうとする小池氏の野望だった。

それは、翌年の都議会での私兵集団「都民ファーストの会」の大勝につながり、国政に進出して「希望の党」の設立へと続く。が、「酷薄な排除の論理」で小池バブルははじけ、総選挙で希望の党は結果を残せず、やがて消滅。マスメディアが小池氏のもとを離れると、安全も安心も得られていないのに豊洲移転を決行した。

その野望を内から痛打した澤氏は、小池氏には目障りだろう。都庁の書店から「築地と豊洲」は消え、「読むな」という都庁職員への指示、「書評でとり上げないように」という都庁記者クラブへの要請が出された。それは、「小池氏が直」というより官僚の忖度だろう。多羅尾副知事は「(退任は)誰が決めたのか」という問いに「都の決定だ」と答えている。そんな官僚のごまかしを誰より知る澤氏は、今後、「都政ウオッチャー」になるという。小池氏は怖い人を完全なる敵にまわした――。

(伊藤博敏/ジャーナリスト)