◆「ハンスト」と決めつけて横行する被収容者イジメ
新型コロナウイルスの脅威には入管もかなわず、2020年4月から被収容者の仮放免が多く出るようになった。茨城県の東日本入管センター(牛久入管)には3月31日の時点で224人の被収容者がいたが、東京入管から移送される人を合わせても現在は100人以下となっている。
たくさんの人が自由の身となるのはとても喜ばしいことだ。しかしそれでもまだ、解放されないままの人々がいる。なぜなのか、長期収容されている人に限って解放されない。その基準がはっきりしないので、残された被収容者たちは困り果てている。
そして最も困ったことには、彼らが入管職員や常勤医の陰湿なイジメに苦しめられているという現実がある。
長期収容のストレスで体を壊し、ほとんどの人が拒食症状態。食事をしても吐いてしまう。そのせいで歩けず、車いすを使っている人が何人かいる。一時期、多くの被収容者がハンストをやっていて、それがメディアに流れ社会的に問題になったせいか、職員や常勤医は食事をとらないと「ハンストじゃないのか?」と執拗に疑ってかかり、責め立ててくる。
しかしハンストなら、抗議する相手に伝わらないと意味がない。本人たちが「そうじゃない」と言っているのに、どうしてハンストだと決めつけたいのだろうか。
◆カメラで監視、トイレのドアもテレビもない「休養室」
日系ブラジル人のアンドレ・くすのきさんもその一人。彼も食事ができず、食べては吐くことの繰り返しだった。そのためやせ細ってしまい、車いすがないと移動ができない。常勤医は日々「ハンストだろう」と責め立ててくる。
食事をとらないことを理由に、アンドレさんは「休養室」に連れて行かれた。
「休養室」とは名ばかりで、天井からは監視カメラがぶら下がっている、トイレは洋式だがドアはなく、パーテーションのみ。テレビもないが、アンテナのジャックはあるのでテレビを設置してもらえるようにお願いしたが拒否されたという。
食事はできなくても、ポカリスエットだけは何とか飲んでいた。しかしそれも禁止され、「弁当を食べるように」と無理強いされた。支援者が差し入れしてくれた食べ物は「入管の弁当が食べられないのなら渡さない」と、受け取らせてもらえなかった。
シャワーは浴びさせてもらえず、ウエットティッシュだけを渡された。頭がかゆくて耐えられなかった。20日目でやっとシャワーを使用することが許された。
◆東京入管からの移送時に職員が罵倒・暴行!?
こうした、きりがないほどの嫌がらせともいえる扱いをアンドレさんは受け続けた。知人との面会の後も、常勤医に「面会だとよくしゃべっていたね、本当は元気なんじゃないの?」と言われ、盗聴されているのかと怖くなった。
アンドレさんは、「本当に彼は医者だろうか? 医者が『国に帰れ』なんて平気で言うだろうか?」と疑っている。
疑うのも無理はない。アンドレさんは2018年10月、東京入管から牛久入管へ移送されるのを拒否して、トイレに隠れた。茨城県の山奥にある牛久入管へはみな行きたがらない。同年には、牛久入管で自殺者も出ている。
「なぜ連れて行かれるのか」とアンドレさんが聞いても、理由は教えてもらえなかった。複数の職員たちに引きずり出され、床に叩きつけられてから手首を思い切り捻り上げられた。あまりの痛みに叫ぶと「力をぬけ!」「抵抗しないか?」と激しく怒鳴りつけられた。
いくら痛みを訴えても、「うるさい、静かにしろ!」「大きな声を出すな」「静かにしろっつってんだよ!!」職員たちがよってたかって、何度も激しく罵倒した。この東京入管での制圧の件は現在、裁判で争っている。そして、牛久入管に移送された後も、上記のような虐待ともとれる非人道的な扱いをアンドレさんは受け続けている。
◆常勤医が「気に入らないなら日本から出ていけ」と発言
もうすぐ収容5年目になるイラン人男性もまた、拒食症に苦しんでいる。それでも、みそ汁などの軽いものはなんとか食べられていた。もともとは独房にいたが、7月7日に部屋を移動させられた。今回は同じブロックに一人だけで、フリータイムで誰かに会うこともない。寂しいどころではなく、「このまま1人で死ぬんじゃないか、殺されるんじゃないか」といった不安な気持ちに襲われるという。
そしてやはり彼も、「常勤医が特にひどい」と証言する。
「その医者は、『気に入らないなら日本から出ていけ』と、ひどいことを言う。30歳代くらいで顔はかっこいい。でも心はない! 名前は教えない、(入管職員の認識)番号もついていない。嫌でも1か月に1度はその医者のところに連れて行かれる。
常勤医は具合が悪いところを診てくれるわけでもなく、『薬を整理する』と言って薬を減らされる。彼に会うと、嫌な気持ちになるだけ。
自分の病気を診てほしくて、毎日手紙を書きました。すると彼は『毎日でも書いたらいいよ、(書いても)私は気にしないから』と、いくら書こうが病気なんか診ないいというふうに言うのです。彼は本当に医者でしょうか?」
毎週水曜日に牛久入管で面会活動をしている「牛久入管収容所問題を考える会」(牛久の会)の田中喜美子さんはこう語る。
「収容所に残された被収容者たちへのイジメが酷すぎる。まるで憎いのかと思うほど。(2人以外にも)制圧されたり、病気を診てもらえなかったり、辛い目にあっている人はたくさんいる。常勤医も『本当に医者なのか?と』、被収容者のみんなから評判が悪い……」
入管ではこのような非道が繰り返されていて、改善の様子がいっこうに見えない。この施設に入ったが最後、職員や医者も人の心を捨てなければやってはいけないのだろうか? 外からみたらあってはならない人権侵害だということに、いつになったら気づいてくれるのだろうか。
<文・写真/織田朝日>
【織田朝日】
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)を11月1日に上梓