1998年に和歌山市で起きた毒物カレー事件は25日、発生から22年になる。当時10歳だった林真須美死刑囚(59)の長男(32)は2019年、ツイッターを始めた。無実を訴え続ける母からの手紙などを投稿している。「事件を思い出したくない被害者の方々の意に反するかもしれない。でも、母が戦い続けている限り、家族の中で『終わった事件』にはできない」と複雑な胸の内を語る。【木村綾】
18年7月、運送会社で働く長男は、トラックを止め、スマートフォンに流れた速報に見入った。オウム真理教事件の教祖、松本智津夫(麻原彰晃)元死刑囚らの死刑執行が報じられていた。
「次は私かも」。いつもは強がってみせる母も、その直後の面会では弱音を吐いた。母の死刑が執行されれば、事件当時のようにマスコミが殺到してくるかもしれない。「日常がまた壊される」。恐怖がよみがえった。
平たんとはほど遠い人生を歩んできた。両親の逮捕後に入った児童養護施設ではいじめを受け、先生には「カエルの子はカエルやな」と言われた。17歳で施設を飛び出した後も、素性が知られて仕事を辞めたり、結婚が破談したりした。
和歌山を離れ、名前を変えて生きる道もあった。でも「逃げた」と後悔したくなかった。何より20年以上「やっていない」と言い続ける母親を見殺しにはできなかった。
母を信じたいと思いながらも、事件についてはフラットに見ることを心がけてきた。それでも10歳までの母の記憶と、判決文の母は懸け離れていて、違和感は拭えない。
19年4月からツイッターを始めた。事件を知らない人が増える中、「終わっていない」と伝えたくて、母とのやり取りや事件関連の記事を投稿している。同年7月には自身の半生をつづった手記も出版した。
誹謗中傷も受けたが、印象深かったのは、両親が逮捕されたり施設で育ったりした人からの応援だった。「施設で育ったことを理由に犯罪に走る子もいるけれど、ちゃんと生活している子も多い。『カエルの子はカエル』じゃないって、人生を通して証明したい」。
現在、母は再審を求め最高裁に特別抗告中だ。「できれば再審で事件を振り返ってもらいたいけれど、どんな結果になっても、終わりまで見届けようと思う」