コロナに勝つ国と負ける国を分ける決定的要因 テクノロジーを現実に落とし込む力がカギだ

米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。 ■AIスタートアップの警鐘 2019年12月31日、WHO(世界保健機関)が武漢事務所から原因不明の肺炎に関する報告を受領するのとほぼ同時に、カナダの小さなスタートアップBlue Dotは、検知した武漢の市場における肺炎のクラスター発生情報から、クライアントに感染流行の警告を発した。WHOが第一報の感染流行通知(DONS)を正式発表する5日前のことである。 Blue Dotは、感染症医師カーン氏(Dr. Kamran Khan)が2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行の経験を機に「政府機関の公的発表を待つだけでは遅い」と考え6年前に創業。獣医・医師・疫学者・エンジニア・データサイエンティスト・ソフトウェア開発者など40名程度のチームを抱え、政府・企業・公衆衛生関係者といったクライアントに分析結果を提供する。 AIを活用した独自のリスク・ソフトウェアは、1日あたり65カ国語10万件の公文書・メディアソースを分析して感染症発生を検知。また、検知した感染症が世界にどう拡大しインパクトを与えるかを、10億単位のフライト旅程・千万単位の携帯端末、リアルタイム気候条件や医療キャパシティーや動物人口・昆虫の数・人口動態などから予測する。 今回のコロナ禍における世界最初の新型コロナウイルス関係科学論文は、Blue Dotによる分析結果であった。これは、その後に全世界で起こる、新型コロナウイルス感染への対応競争において、AIをはじめとした第4次産業革命時代のテクノロジーの活用が、各国の対応の勝敗を決する重要なファクターに躍り出たことを象徴する出来事であった。 各国は、新型コロナウイルスの感染者数・死亡率や経済という共通の成績表を前に政策総動員で対応しており、案の定、テクノロジーの活用はその重要な一部となった。震源地でありながらいち早く感染を抑え込み、マスク外交等の戦略的なポジショニングに転じることができた中国。その感染対策を支えたのは、徹底的な封じ込めを可能にした「健康コード格付けシステム」を搭載したスマートフォンアプリ、医療提供体制の逼迫を緩和したAIによる肺炎のCT画像診断支援ソフト、そして3メートル先にいる人の体温を人混みの中でも測定できるメグビーの顔認証技術と合わせた体温測定システムなどである。われわれは、ユヴァル・ノア・ハラリの言う「全体主義的な監視体制」を持つ中国のすさまじい実装力を目の当たりにした。 ■テクノロジー実装競争の鍵は官民連携

米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。
■AIスタートアップの警鐘
2019年12月31日、WHO(世界保健機関)が武漢事務所から原因不明の肺炎に関する報告を受領するのとほぼ同時に、カナダの小さなスタートアップBlue Dotは、検知した武漢の市場における肺炎のクラスター発生情報から、クライアントに感染流行の警告を発した。WHOが第一報の感染流行通知(DONS)を正式発表する5日前のことである。
Blue Dotは、感染症医師カーン氏(Dr. Kamran Khan)が2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)流行の経験を機に「政府機関の公的発表を待つだけでは遅い」と考え6年前に創業。獣医・医師・疫学者・エンジニア・データサイエンティスト・ソフトウェア開発者など40名程度のチームを抱え、政府・企業・公衆衛生関係者といったクライアントに分析結果を提供する。
AIを活用した独自のリスク・ソフトウェアは、1日あたり65カ国語10万件の公文書・メディアソースを分析して感染症発生を検知。また、検知した感染症が世界にどう拡大しインパクトを与えるかを、10億単位のフライト旅程・千万単位の携帯端末、リアルタイム気候条件や医療キャパシティーや動物人口・昆虫の数・人口動態などから予測する。
今回のコロナ禍における世界最初の新型コロナウイルス関係科学論文は、Blue Dotによる分析結果であった。これは、その後に全世界で起こる、新型コロナウイルス感染への対応競争において、AIをはじめとした第4次産業革命時代のテクノロジーの活用が、各国の対応の勝敗を決する重要なファクターに躍り出たことを象徴する出来事であった。
各国は、新型コロナウイルスの感染者数・死亡率や経済という共通の成績表を前に政策総動員で対応しており、案の定、テクノロジーの活用はその重要な一部となった。震源地でありながらいち早く感染を抑え込み、マスク外交等の戦略的なポジショニングに転じることができた中国。その感染対策を支えたのは、徹底的な封じ込めを可能にした「健康コード格付けシステム」を搭載したスマートフォンアプリ、医療提供体制の逼迫を緩和したAIによる肺炎のCT画像診断支援ソフト、そして3メートル先にいる人の体温を人混みの中でも測定できるメグビーの顔認証技術と合わせた体温測定システムなどである。われわれは、ユヴァル・ノア・ハラリの言う「全体主義的な監視体制」を持つ中国のすさまじい実装力を目の当たりにした。
■テクノロジー実装競争の鍵は官民連携