カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件で、贈賄側に虚偽証言の見返りに報酬を提供しようとしたとして、組織犯罪処罰法違反(証人等買収)容疑で東京地検特捜部に逮捕された会社役員、佐藤文彦容疑者(50)が「(衆院議員の)秋元司被告(48)=収賄罪で起訴=の後援会側から頼まれた」と周囲に話していたことが5日、関係者への取材で分かった。特捜部は秋元被告との関係を慎重に調べるもようだ。
佐藤容疑者は会社役員の淡路明人容疑者(54)と共謀し、贈賄側の中国企業「500ドットコム」元顧問、紺野昌彦被告(48)=贈賄罪で起訴=に、法廷で秋元被告に有利な証言をするよう求め、報酬として6月27日に現金1000万円を、7月22日には現金2000万円の支払いを申し込んだとして、特捜部に逮捕された。会社役員の宮武和寛容疑者(49)は「500」社元顧問、仲里勝憲被告(48)=同罪で起訴=に数百万円の支払いを申し込んだとされる。
関係者によると、佐藤容疑者は紺野被告に「議員会館で秋元被告に会わなかったことにしてほしい」などと、平成29年9月に現金300万円を渡したとされる起訴内容を否定する証言を求めたという。捜査段階から現金の提供を認めていた紺野被告は断ったとみられる。
IR汚職事件をめぐっては昨年12月、特捜部が秋元被告を収賄容疑で、紺野被告らを贈賄容疑で逮捕。今年2月までに起訴され、総額約760万円の賄賂が認定された。起訴後まもなく秋元被告らは保釈された。公判の期日などは未定。
■3容疑者、一部は面識なしか
「なぜ1000万円単位の大金を秋元司被告のために支払うのか」。証人買収の疑いが持たれている3容疑者と秋元被告の関係に、ある検察幹部は注目する。
紺野昌彦被告に現金の提供を持ちかけたとして逮捕された淡路明人容疑者は、独自の仮想通貨を連鎖販売取引(マルチ商法)で販売していた「48(よつば)ホールディングス」(札幌市)で昨年まで代表取締役を務めていた。同社は平成29年10月、消費者庁から特定商取引法違反に当たるとして、一部業務の停止を命令された。佐藤文彦容疑者は現在も同社の取締役だ。
淡路容疑者について、ある秋元被告の関係者は「かなり熱心な支援者で、秋元被告との関係は深い。高級車に乗り大金を持っている」と語る。
仲里勝憲被告に接触していた宮武和寛容疑者は、整骨院や医療施設を展開する沖縄県浦添市の企業で代表取締役を務めており、関係者は「とても真面目なビジネスマン」と話す。東京地検特捜部が関係先として家宅捜索した東京都内の会社の経営者らと親しい関係にあったという。
前出の関係者は「宮武容疑者と淡路容疑者は直接の面識はないのではないか。どちらかが指示して動いているというよりは、別の人間が指揮しているのではないか」と話している。