「黒い雨」訴訟で広島市と県が控訴へ 国の援護区域拡大方針受け

原爆投下後に降った「黒い雨」を国の援護対象区域外で浴びた住民ら84人全員を被爆者と認め、被爆者健康手帳を交付するよう広島市と広島県に命じた広島地裁判決について、市と県は控訴する方針を決めた。市幹部が明らかにした。被爆者援護法を所管し、訴訟にも補助的立場で参加している厚生労働省との協議で、援護区域の拡大に乗り出すとの回答を得られたため。控訴期限の12日に松井一実市長らが記者会見し、詳しい経緯などを説明する。
黒い雨を巡って、市と県は2008年に実施した調査の結果を基に援護区域の拡大を要請してきた経緯があり、7月29日の住民勝訴の判決翌日、国に「控訴したくない」と伝えた。
これに対し、国は被爆者健康手帳の交付を巡るこれまでの最高裁判決や、黒い雨の人体への影響に関する従来の知見を踏まえ「判決は受け入れられない」として控訴すべきだとの考えを示していた。
市関係者によると、控訴を巡る協議で、厚労省は控訴の方針を堅持する一方、援護区域の拡大に向けて前向きな姿勢を示したという。市と県は原告だけでなく、黒い雨を浴びた人を広く救済できる可能性があると判断し、控訴の方針を受け入れることを決めた。
黒い雨の援護区域は、国が1976年、原爆投下直後に爆心地の北西部に大雨が降ったとする気象台の調査を基に指定。区域内にいた人は被爆者に準じて無料の健康診断が受けられ、一定の病気になれば被爆者健康手帳を受け取れるようになった。
しかし、15年11月、国の線引きはおかしいなどとして、区域外にいた住民が手帳交付申請を却下した市と県を相手取って提訴。市と県は国からの法定受託事務で手帳の交付審査を担っているが、裁量が認められていないため、国が実質的な被告となり、住民と争っていた。【小山美砂、賀有勇】